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三大自転車レースは“年に1度のお祭り”。
ジロ初参戦の日本人は明暗分かれる。
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph bySonoko Tanaka
posted2019/05/16 07:30
世界三大自転車レースの1つ「ジロ・デ・イタリア」。イタリアの町並みだけでなく、山岳地帯を走り抜ける。
逃げた初山はフーガ賞を獲得。
イタリアのテレビ放送では約2時間以上、先頭を走る初山を画面に映し続け、経歴なども紹介。テレビ中継のアナウンサーがハツヤマの「H」を発音できず、何度も「アツヤマ」と呼ばれても、誰も突っ込む人はいない。チーム関係者は誰もが満足そうな顔だった。
スポンサーの露出、チーム知名度の向上を考えれば、その貢献度は計り知れないという。逃げて、逃げて144kmの一人旅。最終的には強豪チームのビッグスターたちがひしめく集団に飲み込まれて169位でゴールしたものの、獅子奮迅の活躍ぶりが認められてフーガ(逃げ)賞を獲得。
翌日、イタリアの有力スポーツ紙『ガゼッタ・デロ・スポルト』でも1ページの特集が組まれ、「バンザイ」の見出しがつけられ、「ラストサムライ」が奮闘したと大々的に報じられた。
「反響は予想以上に大きいですね。携帯電話のメッセージもすごいことになっています。第3ステージという早い段階で、チームの仕事を1つこなせたことはよかったです。でも、これで終わったわけではありません。まだまだ続きますから」
最後は自分に言い聞かせるように気を引き締めたが、チームスタッフにポーカーフェイスと呼ばれる男の表情にも充実感が漂っていた。次の見せ場はいつくるのか――。
「チームからの指示が出れば、次も仕事ができるようにしたい」と言葉には自信がにじむ。世界最高峰の舞台で戦う日本人の走りに注目だ。