クライマーズ・アングルBACK NUMBER
犬連れ登山がネット上で賛否両論。
現場任せの行政に問題意識はあるか。
posted2019/05/19 08:00
text by
森山憲一Kenichi Moriyama
photograph by
Kenichi Moriyama
今年3月、ひとつのニュースがネット上で話題になった。ヒマラヤのバルンツェという標高7129mの山を目指していた登山隊に、現地でなついた野良犬がくっついて歩いていた。
登山活動に入ってからも必死に後を追ってくるその犬に情が移った登山隊は、隊の一員として受け入れることを決意。最終的にいっしょに山頂まで達したという。標高7000mというと動物はほぼ生息していない環境であり、犬の到達標高としてはおそらく世界最高記録と思われる。
これはハートウォーミングな「ほっこりニュース」として世界中でシェアされた。ニュースを聞いた人のなかには、自分も愛犬と山に登ってみたいと思った人もいるかもしれない。
たとえば、この夏、いっしょに富士山に登って、日本最高峰登頂犬にしてやりたいなど……。
しかし、ちょっと待った。それを実行したら、あなたは山中で非難の視線(そして声にも)にさらされる可能性がある。
えっ!? ……ということは、犬を連れて登山にいくのは禁止されているの?
いや、そういうわけではない。
じゃあ、何が問題なの?
いや、それは……。
じつは日本での「犬連れ登山」の是非に関しては、複雑な様相を呈しているのだ。
「犬連れ登山」と検索してみると。
試しにインターネットで「犬連れ登山」と検索してみてほしい。表示されるページをいくつか見てみれば、すぐに気づくはずだ。犬連れ「賛成論者」と「反対論者」が対立していることに。それはまるで収拾のつかない政治論争のようで、一部ではかなり口汚い言葉が飛び交う感情対立のようにもなってしまっている。
犬連れ登山者に向けられる微妙な空気は、実際に犬を連れて山を登ってみればすぐにわかるだろう。このあたりの事情を薄っすらとしか知らなかったこのコラムの担当編集者も災難にあっている。
近郊の山に愛犬といっしょに登っていたとき、行き合った多くの登山者は友好的に接してくれたのだが、ひとりの登山者からいきなり罵声を浴びせられたというのだ。
いったいなぜこんなことになっているのか。