“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
尚志FW染野唯月は凄みを増した。
衝撃のハットにも「もう驚かない」。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/04/15 07:00
高円宮杯プレミアリーグEASTの開幕戦でいきなりハットトリックを決めた尚志・染野唯月。格の違いを見せつけた。
志願して蹴ったFK。
そして、覚醒を「本物」に変えたのが、冒頭でも書いたプレミアリーグEASTの開幕戦だった。
25分、ゴール中央左寄りの位置でFKを得る。
「アップ時にFKを蹴っていたので、いいイメージをつかめていた。それに自分な好きな角度だったので、決められると思った。(横に並んだMF)小池(陸斗)に『蹴らせてくれ』と頼みました」
味方に志願し、右足で放ったボールは、壁を超えてゴール右隅に突き刺さった。
「FKは自分の武器のひとつでもありますし、決められる自信はありました。ニアを狙おうとしたのですが、レイソルの壁も高かったので、ファーを狙いました。(柏レイソルU-18は)左利きの小池でも対応できるような壁の作り方をしてきて、うまいなと思ったのですが、ファーの空きスペースが見えました」
79分にはロングフィードに反応し、左サイドでフリーになっていたMF菅野稜斗へ落とすと、ゴール前に猛然とダッシュ。菅野が送り込んだクロスは、頭ひとつ抜けだしたジャンプをした染野のもとへ。
「GKもニア寄りにいたのでファーに流したほうが取りづらいと思って、コースを狙いました」
空中でも冷静に状況を把握すると、ボールをゴール右隅に流し込んだ。
「パスを出した後、ゴール前に走り込むということは自分の中で思い描いていたプレー。いろんな人から『ヘッドがうまい』といわれていたので、武器にしようと磨いてきた。まさに思い通りのゴール」
最後は“パスではなくシュート”。
締めくくりは85分だった。相手のパスをMF福田隼也がインターセプトすると、染野は中央のスペースに走り出す。福田からの横パスを受けると、そのままトップスピードのドリブルで持ち込む。
「以前の自分だったら、ドリブルをしながらパスを考えていたのですが、まずはシュートを考えて、GKの逆を取ることができた」
DFが寄せる時間を与えずに右足一閃。強烈ミドルシュートがゴール左隅に突き刺さった。あの青森山田戦以来、約3カ月ぶりの公式戦ハットトリックだった。チームも3-0で勝利した。
「僕的には良すぎた開幕戦だと思っていて、ハットトリックできるとは思っていなかった。だけど、ピッチ上にいる人間の中で、誰よりも点を取ってやろうという気持ちは強い。しっかりと点を取れたことは良かった」