“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
尚志FW染野唯月は凄みを増した。
衝撃のハットにも「もう驚かない」。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/04/15 07:00
高円宮杯プレミアリーグEASTの開幕戦でいきなりハットトリックを決めた尚志・染野唯月。格の違いを見せつけた。
不完全燃焼が続いた日々。
昨年3月にJグリーン堺で行われたプーマカップでは、フィジカルが逞しくなり、動きながらのポストプレーの精度も高まっていた。「染野がだいぶ良くなってきた。これからが楽しみ」と仲村監督も目を細めたように、着実に成長している印象を受けた。
だが、ここでも彼に対する評価は大きく変わらない。あるスカウトは「ゴールに向かう迫力が足りない」と評するように、パスを選択する場面が多く、ゴールを奪い切るという点では消極的なプレーが散見された。
さらに、U-17日本代表に選出された直後のインターハイ。2回戦の京都・東山戦では、ボールを収めてからの仕掛けやパスの精度は高かったが、徹底した複数のマークを剥がしきれずに、試合中に消える時間帯があった。チームも0-0からのPK戦負け。不完全燃焼のまま夏が終わった。
能力だけじゃない染野の魅力。
それでも、アジリティーの高さと足元の技術を兼ね備えたスペックは魅力的だった。何より、精神面でも大きな可能性を感じていた。
「もっと意識を持ってやらないと、他の選手たちに追いつけないんです。U-17日本代表に入って、同じFWの櫻川ソロモン選手(ジェフユナイテッド市原・千葉U-18)は身体が強いし、きちんと状況判断ができる。あと、僕が見習わないといけないのが清水エスパルスユースの山崎稜介選手。彼は前線からしっかりと追いかけていくプレーができる。そういうライバルに負けたくないですし、盗める所は盗みたいと思いました」
冷静に今の自分を見つめ、ライバルと照らし合わせて、足りない部分を把握する力。こういう考えやメンタルを持つ選手は確実に伸びる。
他の選手にはない抜群の素材に、観察や洞察、自己分析できる内面的な素材が加われば、「心技体」を持ち合わせていることになる。仲村監督がずっと言い続けていたように“化ける”のは時間の問題だった。