“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
尚志FW染野唯月は凄みを増した。
衝撃のハットにも「もう驚かない」。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/04/15 07:00
高円宮杯プレミアリーグEASTの開幕戦でいきなりハットトリックを決めた尚志・染野唯月。格の違いを見せつけた。
選手権前に見せていた「覚醒の兆し」。
そして、その時はやってきた。本人は「選手権がきっかけ」というが、その直前にすでに「覚醒の兆し」を見せていた。
昨年12月の高円宮杯プレミアリーグ参入決定戦、横浜F・マリノスユースとの一戦。2日前のJFAアカデミー福島U-18戦で頭に4cmの裂傷を負ったことで、ベンチスタートとなったが、0-1で迎えた後半に投入されると、1人で試合の流れを激変させた。
染野は横浜FMユースの守備陣形を見ながら、前線でオフ・ザ・ボールの動きを繰り返し、相手にマークの的を絞らせず、縦パスやロングボールを正確に収め、周りのアタッカー陣に丁寧に繋ぐ。守備面でも前線からの強烈なプレスを仕掛け、相手のリズムで進んでいた試合を完全に打ち砕いた。
60分に生まれた尚志の同点ゴールは相手GKへのバックパスがそのまま入るというオウンゴールであったものの、染野の鬼気迫るプレスがそのミスを誘発させたといえる。
そして後半アディショナルタイム。左CKを得ると、DF沼田皇海(現・新潟医療福祉大学)が蹴ったボールをその負傷した頭で豪快にゴールに突き刺す。頭ひとつ抜けた高い打点のヘッドはまさに圧巻だった。尚志はこのゴールで今季のプレミアリーグ昇格を決めた。
「勝負所で決めきる選手に」
「自分が後半から出て、決めてやろうと思っていた。僕の中では厳しい展開になると思っていたので、その中で自分が点を決める、チームを勝たせるという意識は強く持っていました」
まさにエースの気迫だった。そして、その気迫と覚醒した目のまま選手権に突入した。ゆえに、選手権でのあの“衝撃”は当然だったのだ。
「どうしてもゴールが欲しかった。心の底から欲しいと思えるようになったんです。僕はゴールを奪うことに貪欲にやってきた。結果、大事なゲームで点が獲れるようになったのは嬉しかったです。2年間通して、自分が勝負所で決めきる選手になれたのは大きな自信になる。もちろん点を獲るだけでなく、これからも僕は前線で『尚志の起点』になり続けます」