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7人の野球部育ちの“バズーカ捕手”。
加藤匠馬は中日変革の象徴となるか。
text by
渋谷真Makoto Shibutani
photograph byKyodo News
posted2019/03/23 09:00
「甲斐よりも」と中村バッテリーコーチが絶賛する加藤の強肩。開幕戦から先発マスクを狙う。
「このチャンスを逃したら次はない」
「足りないことなんてたくさんあるよ。今まで使ってもらえなかったことにもそれなりの理由はあるでしょう。捕手っていうのは野球で1番つまらない練習をひたすらやるポジション。でもね、完投する、完封する、チームが勝つ。そうすると世界が変わるんです。加藤にもそうなってもらいたい」
現役時代にはまだ「愛のムチ」がまかり通っていた中村コーチは、おそらく誰よりも星野仙一監督の「愛」を注がれた選手だろう。
昭和ではない。平成にそんなことは許されない。しかし、叱られても叱られても次の日も使ってもらえた日々があるから、今の立場もある。子どものころからナゴヤドームに通っていたという加藤は、世代的には「中日の捕手といえば谷繁さん」だろうが、「中村さんのそうした話はいろいろな人から教えていただいています」と言う。
「だから絶対に食らいついていかなきゃ。このチャンスを逃したら次はない。来年はないと思ってやっています」
正捕手に挑めるのは最初で最後。加藤はそう思っている。学年5人の小学校から育ったヒーロー。唯一無二のストロングポイントをもつ男。キャラは立ちすぎるほど立っている。
繰り返すが「まつさかうし」。そして甲斐は「たくや」だが、加藤は「匠馬」と書いて「たくま」と読む。シーズンが終わるころ、キャノンよりバズーカの知名度が上回っているようなら、ドラゴンズの成績もV字回復しているはずだ。