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稀勢の里の引退を復活の力に!
楽天・美馬を突き動かす反骨心。
posted2019/03/23 11:00
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
その文面に、思わず目を疑った。
1月16日。楽天の美馬学はハワイにいた。昨年の右ひじ手術からリハビリを終え、復活を期して自主トレに励んでいる最中だった。
朝、目が覚めスマートフォンをチェックすると、画面にメッセージ通知が表示されている。
「えぇ!?」
一気に目が覚めた。
それは、横綱・稀勢の里(現荒磯親方)からの「引退報告」だった。
少し冷静になってから去来した心情を、美馬が教えてくれた。
「怪我の治療を頑張っていたことは知っていたし、本人も『まだいける』と言っていたから。決断するのは相当辛かったと思います。正直、もうちょっとやってほしかったですけど、本人が決めたことですからね」
プロ野球選手と横綱。
いずれも、誰もが憧れる肩書である。しかし、多くの興味を引くのは後者だ。
美馬は、それを分かっている。
元ライバルだった稀勢の里。
稀勢の里との付き合いは長い。ともに茨城県出身。同い年であり、友人でもある。中学時代は藤代中のエースとして、隣町の長山中でエース兼4番だった彼とライバル関係にあり、しのぎを削り合いながら友好関係も深めていた。
美馬にとって稀勢の里は、今でも中学から知る「萩原寛」である。その友が、2017年に日本出身者で19年ぶりの横綱に昇進した。美馬自身、同年に初の開幕投手に任命され飛躍のシーズンを迎えようとしていたのだが、大役への意気込み以上に、新横綱とのエピソードを求められたものだ。
悪い気分はしない。ただ、本心を言えば、少しだけ辟易していた。
「別にいいんですよ。本人も気にしないと思うんで。でも、毎回同じようなコメントをして新聞とかに載っちゃうと、な~んか、僕が便乗している人みたいに思われないかなぁって(笑)。『なんだ、あいつ』って」