ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
獣神サンダー・ライガーが引退決断。
ジュニア発展に身を捧げた男の矜持。
posted2019/03/13 08:00
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph by
AFLO
長年、プロレス界のジュニアヘビー級シーンを牽引してきた獣神サンダー・ライガーが、来年1月4日、5日に行われる新日本プロレスの東京ドーム大会で引退することを発表した。
ライガーは3月6日に東京・大田区総合体育館で行われたIWGPジュニアヘビー級選手権で王者・石森太二に敗れた。
この試合後、「俺なりに考えるところもあって、近いうちにいろいろ語らせてもらいます」と意味深な発言をしていたこともあり、ファンもある程度は覚悟していただろうが、ついに本人の口から正式に語られたことで、マット界に大きな衝撃が走った。
マスクマンであるライガーの年齢は、公式プロフィールでは「非公開」となっているが、実年齢はすでに50代半ばに手が届くのは公然の秘密だ。現在の新日本プロレス所属選手の中では最年長で最古参。リングに上がってしまえば、まったく年齢を感じさせない、はつらつとしたファイトを常に展開していたが、本人の中ではもうずいぶん前から考えるところがあったのだろう。
長州が話していた言葉の意味。
筆者は2016年11月にライガーのインタビューを行っているが、その時すでに近い将来の引退を示唆するような、以下の発言をしていた。
「長州さんが以前、『歳をとると、気持ちがリングに向かっていかなくなる』って言われてたんですけど、自分もそれがわかるようになってきてるんですよね。
今までは『試合をしたい』っていう気持ちが100%だったのに、『なんか今日は疲れてるな』とか、『ケガしてて痛えんだよな』とかっていう気持ちが入ってくるようになって、それが年齢を重ねるごとにだんだん大きくなってきている。現役でいる限り、それではイカンなと思って、気持ちが乗ってない時は、コンビニで栄養ドリンクとかを買って飲んで、カーッと奮い立たせないとリングに上がれないとか、そういう場合もあるんですよ。
だから、やれるところまでやりたいですけど、いまの新日本で、いつまでもズルズル続けるのもどうかと思うし。ボクが若手の頃、『この人、いつまでリングに上がるんだろ?』みたいに思うベテラン選手も正直いたんですけど、自分も若い人からそう思われても不思議ではないんで。
だから、なるべく練習をするようにしてるんですけど、ダラダラと長く続けるつもりはないです!
だって、せっかく好きで入ったプロレスなのに、『リングに上がるのがしんどいな』と思いながらやるのも嫌じゃないですか。だから自分自身にとっても、ファンの人たちにとっても、どこかでケジメをつけるべきだと思うんですよ。ボクの残りの現役生活は、絶対に長くはないですね」
ライガー自身の中では、すでに数年前からカウントダウンは始まっていたのである。