猛牛のささやきBACK NUMBER
難病を乗り越えたオリ安達了一。
貫く“ショート”へのこだわり。
posted2019/03/11 10:30
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
昨秋、オリックスのドラフトの補強ポイントは“ショート”だった。
オリックスは1巡目で報徳学園高校のショート、小園海斗を指名。4球団競合の末、広島が小園のくじを引き当てると、次は外れ1位で天理高校のショート、太田椋を指名し獲得した。
オリックスのショートには31歳の安達了一がいる。プロ1年目の2012年は右手親指の怪我があり50試合の出場に終わったが、'13年にショートのレギュラーをつかみ、それ以来、不動の存在になった。
ADVERTISEMENT
それが揺らぎかけたのが'16年だった。1月に潰瘍性大腸炎と診断され、入院生活を余儀なくされた。潰瘍性大腸炎は厚生労働省に指定されている難病である。
それでも安達は4月に早くも一軍復帰する。連戦の中でもできる限り睡眠を確保し、口にするものには細心の注意を払い、病気に効果があると聞けば何でも試した。体調を見て休養も入れながら、その年は118試合に出場した。
難しい打球も難しく見せず、当たり前のようにアウトにする安達の守備が、いかにチームにとって大きいかが改めてあらわになった。しかもその年、打率はキャリアハイの2割7分3厘を記録。その後、病気の再燃も乗り越え、昨年は'16年以降最多の140試合に出場した。
押し寄せる世代交代の波。
それでも、チームとしては後継者を作らなければならない。谷口悦司スカウトは、「安達も年齢を重ねてきていますし、すぐにそこに追いつくレベルの選手を獲らなければ」と語っていた。
安達に、昨年のドラフトをどんな思いで見ていたのか、聞いた。
「そこはしょうがないですからね(苦笑)。(世代交代が)早ければ早いだけ、チーム的にはいいことだと思うので。若さには勝てないんで。そりゃ同じ(プレー)だったら、若い人を使った方がいいから」
どこか達観したように、穏やかに話した。
「使うほうは、そりゃあ健康なやつを使った方がいいと思いますし。僕は指導者に恵まれたから出してもらえた。使ってくれた(前監督の)福良(淳一)さんには感謝しています」