猛牛のささやきBACK NUMBER
難病を乗り越えたオリ安達了一。
貫く“ショート”へのこだわり。
text by

米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2019/03/11 10:30

キャンプやオープン戦では大城、福田らとのポジション争いが勃発。開幕に向け、先発ショートの座をかけて戦い続ける。
安達が語る「ショート」へのこだわり。
今年、安達はレギュラーを約束されてはいない。春季キャンプやオープン戦では、大城滉二や福田周平がショートを守り、安達がサードに入ることもある。
「体調がどうのこうのとか、今はそんなことを言ってられない。でも自分は体調を気にします。自分は病気と付き合っていかなきゃいけない。体調を見ながらやっていくしかない。将来のことを考えたら、やっぱり体のことが大事です。野球というより……そのあとのほうが長いですから」
穏やかに話す安達に、ショートへのこだわりを聞くと、少し口調が強まった。
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「こだわりはやっぱりありますよ。ショートを守れなくなったら自分はもう引退しようかなと思ってるんで。他のところを守りたいと思わない。それはコーチにも言っています」
キャンプでサードを守った時も、まったく興味はわかなかったと言う。
病の経験が考え方を変えた。
「ショートを守れなくなったらあっち、というふうに、自分は幅を広げたくない。周りの人は、絶対に幅を広げておいた方がいいって言いますけど、自分は、野球を長くやりたいというより、ショートを守りたいという方が強い。長く続けたいより、自分のやりたい方向でやりたいんです」
プロに入ったばかりの頃は、出られるのならどのポジションでもいいと思っていた。しかしショートでキャリアを重ねるにつれ、こだわりが生まれた。それに加えて、「病気をして考え方が変わった」と言う。
「(病気をする)前は、長く(プロで)やりたいと思ってたんですよ。でも今は、もう長くはないと思ってるんで。(昨オフ)3年契約をしましたけど、それで終わりぐらいの気持ちで今やっています」
病気を抱えていることで、他の選手以上に節制をし、気を張ってシーズンを送っていることは間違いない。
再燃の恐怖もつきまとっていることだろう。それだけに、広く長くではなく、強いこだわりを糧にし、凝縮された野球人生を思い描いていなければ、気持ちとコンディションを維持し続けるのは困難なのかもしれない。