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宇野昌磨が初めて見せた熱い「感情」。
四大陸で逆転優勝に至るまでの気持ち。 

text by

田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byItaru Chiba/AFLO

posted2019/02/12 18:05

宇野昌磨が初めて見せた熱い「感情」。四大陸で逆転優勝に至るまでの気持ち。<Number Web> photograph by Itaru Chiba/AFLO

フリーの演技直後。崩れ落ちるように突っ伏した宇野昌磨。すでに肉体の限界を越えての演技だった……。

他の選手を見る余裕もなかった、と宇野。

 SP1位は4ルッツのコンビネーションと4サルコウを成功させた、アメリカのヴィンセント・ジョー。2位は4サルコウをきれいに降りた、韓国のチャ・ジュンファン。3位はシーズン前半の不調を乗り越え、調整してきた中国のボーヤン・ジン。

 普段はたとえ自分の滑走前でも、他のトップ選手の演技を見ると公言していた宇野だが、今回はその余裕もなかったのだという。

「もう3回も同じ場所を怪我して……これまでは(ウォーム)アップといっても、ただ体が動けばいいと思っていたのですが。

 でも3回目に怪我をしたときは、ちゃんとアップしなければ怪我は治らないんだな、足を鍛えていかないとまた怪我をしてしまうんだな、と思ったので、(今回は他の選手の演技を見ないで念入りにウォームアップし)試合前は自分のことに集中していました」

宇野が見せた、無我の境地。

 2日後のフリー、男子最終グループが氷上に登場すると、宇野はこれまで見たことのないような表情をしていた。

 自分の世界に集中して雑念を遮断するような、英語でいう「In the Zone(究極の集中)」に入り切った眼差し。

 会場いっぱいの観客も、シャッターをきる大勢のカメラマンたちの姿も、宇野の目には入っていないように見えた。

 ベートーベンのピアノの音色にのせて、最初の4フリップがきまった。続いて4トウループ、3ループ、と着実に降りていく。

 後半の4トウループコンビネーションは降りたが、3アクセルの後につけた3フリップで着氷が乱れかけたのが、唯一のミスらしいミスである。

 オリンピックで銀メダルをとったのは伊達ではない。宇野の底力をひしひしと感じさせた、鬼気迫る演技だった。

「(演技前は)気持ちだけ、気合、力でどんなジャンプでも降りてやろう、自分を信じる、大丈夫だとかいろいろ考えてはいたんですけ……最後(リンクに)立った時、何も考えなかった。

 そこからは覚えていないんですけど、最後は無心でやったのが良いほうに向いたのかわからないけど……良かったんじゃないでしょうか」

【次ページ】 今季男子フリーの最高点をマーク!

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