フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
宇野昌磨が初めて見せた熱い「感情」。
四大陸で逆転優勝に至るまでの気持ち。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byItaru Chiba/AFLO
posted2019/02/12 18:05
フリーの演技直後。崩れ落ちるように突っ伏した宇野昌磨。すでに肉体の限界を越えての演技だった……。
今季男子フリーの最高点をマーク!
演技直後、氷の上に崩れ落ちたのは、耐えようもない足の疲労感からだったという。
「本当はそこで寝ころびたいくらい足の裏がしんどかった。全日本が終わってから新しい靴に替えたんです。それで練習もあまりしていなかったので、新しい靴は足の裏がきついんです。
それもあって、立っているのもしんどかったんですが……次の人に迷惑だなと思って、『帰ろう』と思って帰りました」
会見後の囲み取材で、ちょっと苦笑しながらそう気持ちを説明した。
フリーの得点197.36は、今シーズンの男子の最高スコアだった。今季からリセットされた現在の男子の歴代最高点である。
初となるシニアチャンピオンシップタイトル。
SPのトップ3人ともフリーでミスが出たこともあり、見事、逆転優勝。
2位はボーヤン・ジン、3位はヴィンセント・ジョーという最終結果となった。
シニアに上がってから大きな国際大会では2位が続いていた宇野が、シニアで初めて手にしたISUチャンピオンシップタイトルである(注:GPシリーズはチャンピオンシップではない)。
「金メダルを首にかけた感触は銀とは違いますか?」と聞かれてこう答えた。
「銀でも嬉しかった。オリンピックは嬉しかった。金だから銀だからどうこうというわけではない。
金メダルを取れたということは素直に嬉しいけど、それまでの練習の積み重ねがなかったから達成感は、薄いです」
結果は嬉しいけれど、そのプロセスには満足していない。
その気持ちがあったからこそ、優勝会見で「練習したうえで」世界選手権の優勝を目指すと口にしたのである。
宇野がこうした宣言をするのは、とても珍しいことだった。