フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
宇野昌磨が初めて見せた熱い「感情」。
四大陸で逆転優勝に至るまでの気持ち。
posted2019/02/12 18:05
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Itaru Chiba/AFLO
フリーの最後のポーズを決めた宇野昌磨は、まるで糸が切れた人形のようにそのまま膝から崩れ落ちて氷の上に突っ伏した。
精も根も尽き果てて、持っているすべてのものを出し切った、というように見えた。
会場中の観客が立ち上がり、宇野にスタンディングオベーションを送る中、ゆっくりと立ち上がると、歓声に応えてお辞儀をした。
これまで平昌オリンピックなど、数々の大舞台を比較的淡々とこなしてきた彼が、ここまでドラマチックな感情を見せたのは珍しいことだった。
優勝会見で、宇野はこう気持ちを語った。
「終わった直後は嬉しいという気持ちよりも、終わった、やりきったという気持ちだけが残り、1位という順位になれたことは素直に嬉しいですけれど、世界選手権ではもっともっと練習をした上での優勝を目指したいと思います」
SP4位という予想外のスタート。
2月7日からロサンジェルス郊外アナハイムで開催された2019年四大陸選手権で、宇野は圧倒的な優勝候補と言われていた。
だがSPでは、4位という予想外のスタートになった。冒頭の4トウループで片手をつき、3サルコウ+3トウループの最後でステップアウトという、彼らしくない演技だった。
演技直後、宇野は報道陣に囲まれるとこう語った。
「満足いく演技ではなかったんですけれど……『悔しい』と言えるほど練習してこなかったので、ぼくには悔しいという権利はないかなと思うんです」
12月、全日本選手権の開催中に捻った右足首の同じ箇所を、その後2度続けて捻挫してほとんど練習することができなかったのだという。
「痛みはもう全くない。ただ練習不足だな、と滑っていてすごく思った。スケーティングが安定していない、不安感の残るプログラムでした」