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青学無双の予感が漂った出雲駅伝。
原監督は「いやあ見事だったね」。
posted2018/10/09 17:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Kyodo News
出雲駅伝は、青山学院大が東洋大を振り切った。
青学大と東洋大の差はわずか12秒。ひとりあたり2秒という僅差である。
ゴール後、両校の監督、選手たちに話を聞くと、勝敗のカギとなった区間は「1区」だったことが浮かび上がってきた。
青学大・原晋監督、東洋大・酒井俊幸監督とも、1区に惜しみなくエースをつぎ込んだ。6区間の出雲では出遅れが致命傷になりかねない。
青学大は7月のホクレン・ディスタンスチャレンジの5000mで13分37秒という青学大記録をマークした橋詰大慧(4年)、対する東洋大も13分台の自己ベストを持つ相澤晃(3年)を投入した。
当日の出雲は気温が高く、集団走が続くなかで両者ともに仕掛けどころを探っていたが、残り2kmの地点で動いたのは相澤の方だった。
その背景には、ラストスパートに対する不安があったと酒井監督は語る。
「レース前に、『誰が、嫌な相手なの?』と聞いたら、『橋詰さんです』と相澤が言ってたんです。ラストのスプリント勝負になると厳しいと思ったので、ラスト2kmのところで勝負に出たんでしょう」
原監督「いやあ、見事だったね」
たしかに、相澤がスパートした時点では橋詰との差は開いた。しかし、橋詰は冷静だった。ライバルの背中を見ながら、橋詰はこう考えた。
「相澤君が出た時、一瞬迷いましたが『ここじゃないな』と思って、自重しました。僕としてはラスト1kmまでは我慢して、そこから勝負に出ようと」
この判断が、青学大の「三冠」の可能性を確実に高めた。
「もしも相澤君についていったら、ラストはバテていたかもしれません」
第1中継点まで1kmを切ってから橋詰はペースを上げ、相澤を抜き去る。橋詰は、2区の鈴木塁人(3年)にタスキを渡す時点で、相澤に6秒差をつけていた。原監督は教え子の判断をべた褒めした。
「いやあ、見事だったね。あれが橋詰の持ち味です。レースの流れのなかで、冷静に状況判断ができる。焦らないのがいいですよね。6秒差って大きいんですよ。2区の鈴木が精神的に余裕を持って走れますから、今日の橋詰は最高の仕事をしてくれました」