ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
トルシエ「“攻撃的な守備”が方針だ」
アジア大会で見えた森保監督の哲学。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byNaoki Morita/AFLO SPORT
posted2018/09/11 10:30
アジア大会では、海外メディアが選ぶベストイレブンにも選ばれた身長189センチの立田悠悟。今後、世界レベルに化けるか?
世代交代をどうやって加速させるか?
「9月と10月の試合で森保監督は、自分がどんなオプションを持ちうるかを確認するはずだ。
主力選手を招集するのか。それとも別のオプションを選ぶのか。
おそらくは……その両方を彼は試すだろう。
ふたつのシナリオを描き、その後に最善は何かを判断する。変化を加速化させていくハズだ。
彼の哲学は選手よりもチームだ。
選手を核にするのではなくチームを核にする。重要なのはあくまでもチームで選手の名前ではない。たとえ名のある選手でも要求に応えられなければ特別扱いはしない。決断を下すのは9月、10月の試合の後になるだろう」
――たぶんその通りだと思います。彼が今回招集したのは4人(後日追加で6人)の初代表とヨーロッパ組でも代表の主力でない選手たち、あとは若い国内組ですから。
「主力は呼ばなかったのか?」
――呼んでないです。ところであなたは2つのチームをひとりの監督が指揮することの不安定さを指摘しています。
「その不安定さはアジアカップの後に生じるだろう。今はまだ軋轢はない。アジア大会を終えた後にA代表に集中する。さらにアジアカップを戦う。そこにはなんの齟齬も軋轢もない。
しかしアジアカップの後にはそれぞれの立場の違いから軋轢が生じる。2020年の東京五輪には膨大なエネルギーと集中力が求められる。2022年のカタールワールドカップも同様だ」
森保監督の敵は「日程」のみ。
――あなたと同様に大きなデッサンを描いたうえで全体を統括できるでしょうか?
「二十数人のヨーロッパ組とおよそ30人の五輪代表候補。この50人をベースに最高のA代表と五輪代表を作りあげることができる。
私は監督として彼がどうしようとしているのか、何をしているのかが良く分かった。韓国戦は自分たちよりもずっと強いチームを相手に、日本がいかに知的に抵抗できるかを十分に示した。素晴らしい戦術的な仕事だった。
問題は日程だ。私のときには日程の重なりはなかった。U-20と五輪、A代表の日程は常に異なっていたから、同じスタッフとともに3つのカテゴリーの仕事をすることができた。
彼には五輪代表世代でアジアカップに臨む勇気があるのか、それともワールドカップ組を10人起用するのか、あるいは15人起用するのか……。
日程さえ重ならなければ仕事ぶりを見る限り、彼はベースを選手ではなくチームにおいて仕事をする最初の日本人監督になるだろう。彼にはその能力がある」
――どうもありがとうございました。