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トルシエ「“攻撃的な守備”が方針だ」
アジア大会で見えた森保監督の哲学。
posted2018/09/11 10:30
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Naoki Morita/AFLO SPORT
フィリップ・トルシエは今、ベトナムのハノイにいる。Jヴィレッジを彷彿させる最新の施設である「PVFアカデミー(ベトナムサッカー選手才能開発投資ファンド・アカデミー)」で、ディレクターとしてベトナムの育成プログラムの作成と統括を指揮している。
そのトルシエと、日韓決戦となったジャカルタ・アジア大会決勝を一緒にテレビ観戦する機会を得た。いったいトルシエは、若き五輪代表世代の戦いぶりと森保一監督の采配をどう見たのか。また自身以来となるひとりの監督によるA代表と五輪代表の兼任に、どんな展望を抱いているのか……。
トルシエが語った。
決勝は韓国が日本を圧倒していたが……。
――アジア大会決勝ですが、全般的な印象から。
「より優れたチームが勝った。韓国はプレーを入念に構築して攻撃的でもあった。ボールもピッチも支配していた。彼らは日本サイドでずっとプレーし続け、何度もコレクティブな攻撃を繰り返し、フィジカルでも圧倒した。
試合開始から、日本が相手の攻撃を跳ね返す状況にあるのは明らかだった。それは日本が自ら選んだ展開ではなく、両者の純粋な実力差から導き出された結果だった。
ただ、それだけの差がありながら、日本はよく抵抗した。
組織された3バックの守備戦術を活用した、知的な抵抗だった。中盤の選手が戻ってボールにプレッシャーをかけ、韓国に危険な状況を簡単には作らせなかった。韓国の攻撃を組織された守備の力で根気強く跳ね返してはいた。
ひとつの守備文化と言ってもいい。すべてがロジカルで効率的だった。
私自身が守備を第一に考えているから、同じ監督として森保監督が実践したことを十分に理解できた。
カウンターでしか反撃できない日本は、守備が最高の攻撃になりうることを示した。とても高いレベルの仕事であったといえる」