球道雑記BACK NUMBER
混パの主役ロッテで頼もしい復活劇。
酒居知史の2勝目の大きな意味。
posted2018/07/04 07:00
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
Kyodo News
「練習では頭を使って、試合では体を使って」
千葉ロッテ・酒居知史は、それを常に念頭においてきた。
「(大阪体育大学時代に)体のことを勉強して、理にかなった練習法があることに気付きました。自分の投球フォームを客観的に見て、こういう投げ方をしているんだと再確認したり、他の方の投球フォームを見て、この人はこういう体の使い方をして、こう投げているんだとか、チームにあるデータなども見ながら、研究をしたり、たくさんの論文を読んだりもしました。そこで自分がやるべきことが、より明確になったんです」
大学で学びを得たことで、それまでどこか窮屈に思えていた野球が楽しく感じられるようになったという。その考えはプロに入った今も変わらない。
しかし今年の春先、酒居はそれを一瞬、見失った。
西武打線の破壊力を意識し過ぎた。
4月21日、メットライフドームの埼玉西武戦。3回までフォアボールひとつ、無安打、無失点で切り抜け、上々の立ち上がりを見せた酒居だったが、味方が3点を奪った直後の4回裏、気持ちが守りに入ったところを、相手打線に一気に畳みかけられた。
「あれだけの強い打線なので、強い球をしっかり投げなきゃいけないというのは常に頭の中にありました」
「しっかり投げよう」という強い想いが、心と体のバランスを崩し、ひいては技を錆びつかせた。
この試合が行われる3日前、西武は0-8の劣勢から8、9回の終盤2イニングで9点を奪う大逆転劇を演じていた。当然、その情報は酒居にも入っていたし、3点をもらった直後、そのことが一瞬、脳裏を過ぎった。
「そういう余計な部分を強く意識し過ぎてしまったというか、思うような強いボールを投げられていなかった自分に、『この配球で、このボールじゃ打たれるんじゃないか』と、信じ切れない自分がいたんです」