球道雑記BACK NUMBER
混パの主役ロッテで頼もしい復活劇。
酒居知史の2勝目の大きな意味。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2018/07/04 07:00
酒居の活躍でチームは3位タイに浮上。パ・リーグは5チームが「Aクラス」という混戦を演じている。
「気取っている自分がいたような」
迷いが生じた酒居のボールは、山賊打線の格好の餌食となった。
4回裏、1点を返され、さらに2死一、二塁の場面、7番・栗山巧が、甘く入った直球を仕留めてライトスタンドへ逆転の3ランを放った。さらに5回には3番・浅村栄斗、4番・山川穂高には連続ホームランを浴びて3失点。
体より先に頭が働いた結果、全てが悪い面へと転がった。1週間後、酒居の二軍降格が言い渡された。
開幕から5試合に先発して、防御率は7.36。球速、ボールのキレ、制球力、どれをとっても本来の彼の姿には程遠い状態だった。
二軍降格前、小林雅英一軍ピッチングコーチに、今の自分がどう映っているかを問いかけた。
「(マウンドで)気取っている自分がいたような気がします」
すると、小林はゆっくりと頷きこう返した。
「そうかもしれないな」
相手バッターとシンプルに勝負しないと。
ルーキーイヤーだった昨年、後半戦だけで5勝1敗という高い勝率を残した酒居だったが、その事がほんの少しの慢心にも繋がった。
「昨年、結果を残したことで、気持ちに余裕ではないんですけど、試合でも『まあ抑えられるだろう』という甘い考えがどこかにあったと思うんです。だけどそれが勝負どころで、ギアを上げられなかったり、悪い方向に出てしまったりした。
もちろん(マウンドで)余裕を持つのは良い部分もあるんですけど、自分には少し合っていなかったのかなって」
さらに酒居は話を続けた。
「結局、(春先は)頭を使いながら野球をしすぎていたのかなって思うんです。もちろんそれも良い部分があるんでしょうけど、自分の原点を振り返ると、けっしてそうではないのかなって……。もっと体を使って、全力で、相手バッターとシンプルに勝負して、そういう野球が自分には合っていたんじゃないかって」