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ベルギー黄金時代を築いた10年間。
攻撃陣は世界トップ、つけいる隙は?
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2018/07/02 12:00
ベルギー代表選手全員と日本代表全員の合計年俸を比べると10倍もの差があると言われるが……果たして実力ではどれほどの差があるか。
ついに強さのピークを迎えたベルギー。
「あれからもう10年、いまも多くの仲間がすぐそばにいる。心強いし、彼らは俺の財産だ。心と心のつながりは、ベルギーが世界最強だと思う」
10年前を振り返るとともに、現チームの強みを語るのはヤン・ベルトンゲンだ。
負傷がちのバンサン・コンパニに代わるDFリーダーであり、所属するトッテナム・ホットスパーでもシーズンを重ねるごとにパフォーマンスが安定してきた。2017-18シーズンは、キャリアハイといって差しつかえないほど充実していた。
勝負を決める意味で、緻密な戦略に基づく高等戦術は絶対に必要だ。しかし、選手同士が信頼していなければ、戦略・戦術は無意味に終わる。ましてベルギーのような多民族国家であればなおさらだ。
現チームもフランス領マルティーニクの血を継ぐアクセル・ビツェル、両親がアルジェリア系移民のアザール兄弟、ロメル・ルカクはコンゴ系で、マルアン・フェライニのルーツはモロッコだ。
育ってきた環境によって価値観は異なる。
多言語チームを率いるスペイン人監督。
また、公用語もフラマン語、フランス語、ドイツ語と幅広く、島国・日本で生まれ育った感覚でとらえると、統一感の形成は至難の業のようにも感じられる。
しかも、現チームの監督はスペイン人のロベルト・マルティネスだ。日本や英国同様、スペインも他国の文化を受け入れづらい民族との定説がある。はたして、適任なのだろうか。
「新鮮な驚きだった。確かに育ってきた環境は違うけれど、違うからこそ異なる概念を受け入れる柔軟性がある。順応力も高いので、新しい人間が入ってきてもスムーズに対応できる。心の豊かな選手に囲まれて、私は幸せ者だ」
筆者の狭量はマルティネス監督の証言によって木っ端微塵に打ち砕かれた。