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浅野拓磨「俺が一番知ってますもん」
サッカー選手の価値は一瞬で変わる。
text by
小野晋太郎Shintaro Ono
photograph byGetty Images
posted2018/05/27 17:00
今シーズンの浅野拓磨が苦しんだことは明らかである。しかし大一番で評価を覆してきたこともまた事実なのだ。
「俺、マジで全然遊んでないっす」
ドイツの14時が日本の21時。その時間が、家族と電話する心の支えの時間だった。
ドイツに渡ってからは、簡単な自炊も始めた。サッカーと向き合うだけの2年間だった。
「俺、マジで全然遊んでないっす。練習と、家族と電話して(笑)。日本に帰ってきてからも、ほとんど代理人か家族と一緒にいたんで」
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5月に人知れず日本に帰ってきて、代表に合流するまでの4日間。
誰と遊びに行ったわけでもない。滞在するホテルで、家族とともに過ごした。あとはそんな家族の一員のような代理人とずっと一緒にいた。
昔からそうだった、インタビューでも取材でも、求められれば答える。相手のことを想って。だが、求められないと自分から前にはでない。
ドイツに行ってからは、もともと少なかった「遊びたい」という欲も消えてしまったという。
出番がなくともくさらずに練習を続けていたことを、チームの関係者はずっと見てくれていた。だからコンディションが落ちていないことも、周囲の人間は分かっている。
その日々の積み重ねがあったから、代表チームにも生き残れた。
「誰も見ていないように見えても、誰かが見ているし、すべては未来につながっている。ホント改めて未来は現在の積み重ねだと、今回痛感しました」
「1試合で選手の価値が変わることは知ってますもん」
浅野はもともとエリートだったわけではない。プロ2年目まで、リーグ戦では0ゴール。アンダーのカテゴリーでも名前が挙がることは少なく、初めて公式戦で日の丸に袖を通したのは2014年のU-22選手権だ。当時プロではまだ1ゴールも奪っていなかった。その時からこう語っている。
「自分の目標はあくまで、ここではないんで。五輪に出て、活躍して。一番の目標のA代表にはいって、W杯に出たいっていう大きな目標があります。それが無理だとは思ってないんで」
あれから4年。泥臭くサッカー人生に結果を積み重ねてきた。
クラブワールドカップの準々決勝、リオ五輪最終予選の最終予選の決勝、そしてロシアW杯出場を決めたオーストラリア戦。
注目される大事な試合でこそ浅野はピッチに立ち、常にゴールを奪ってきた。
いま自分が批判されていることも知っている。それでも事もなげにいった。
「1試合で選手の価値が変わることは、俺が一番知ってますもん」
もう1カ月もない。サッカー選手としてずっと夢見てきた人生一の大舞台がそこに待つ。
シュツットガルトと同じ想いをするつもりはない。スタメンでも途中出場でも、求められれば、求めてくれれば、結果を出す。今までも、そうしてきたように。