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Jリーグのビデオ判定はどうなる?
試合が止まる時間は1分以下だが……。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/04/26 11:00
審判は孤独な仕事だ。正しくて当然、間違えれば猛烈なバッシングを受ける。VARが正しい判定を助けるのならば、その導入は必然だ。
VARでどの程度判定の正確性が変わるか。
例えば、Jリーグ第1節のセレッソ大阪対横浜F・マリノス戦で、副審が誤ってオフサイドをとったことでゴールが取り消された。実はこの副審は、続く第2節でヴィッセル神戸対清水エスパルスの試合で同じように難しい局面で、今度は正しい判定をしている。しかし、それはあまり報道されない。
またVARの適用範囲についても、誤解がある。適応されるのは、おおまかにいって、以下の4つの場面に限定されている(括弧内の数字は、VARを採用した際に正しい判定の確率がどの程度上がるか)。
・ゴールか、ゴールでないかにかかわる判定 (91.6%→99.1%)
・PKかPKではないかにかかわる判定 (90.5%→98.3%)
・一発退場かどうかにかかわる判定 (96%→99.1%)
・(カードの対象者の)判断 (72.7%→100%)
これは、VARはVideo Assistant Referee という名前の通り、判定をアシストするものだ。ピッチの外で映像を見ながら検証している4人のレフェリーは、試合でくだされた判定が疑わしいときに、「レビューを提案する」ことしかできない。
そのうえで、最終的な判断を下すのは主審である。主審が判定に自信をもっていれば、レビューを行なわなくても良い。
この点が、他の競技とは違うところだ。例えば、今シーズンから日本のプロ野球でもビデオ判定のリクエスト制度が導入された。これは1試合につき、各チームの監督がそれぞれ2回までビデオ判定を審判に要求できる制度だ。
これは審判ではなく、チームに権利が与えられているもので、判定の正しさを問うためのシステムだ。同じようにビデオを使うものであっても、コンセプトがまったく異なる。
JリーグのVARでは、試合の行方を左右するような、重大かつ明白な誤りを修正するものだ。役割を限定しているからこそ、それなりに短い時間の中断で済んでいる。
それでも、拒否反応は出る。
それでも、VARには拒否反応が出る。そこにはいくつか理由がある。
正しい判定は話題にならないため、VARの運用によって混乱したシーンばかりが言及されてイメージが悪くなりがち。従来のサッカーにはないものだから。VAR1回あたりの所要時間が長いことがクローズアップされるから。そして、VARの適応範囲とコンセプトが理解されていないから。
さらに、TVで観戦している人はリプレーを何度も観ることが出来るが、スタジアムに来ている人が状況を上手く理解できないという問題もある。
こうした条件があるので、人々は拒否反応を示しがちだ。