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湘南国際を運営の坂本雄次さんに聞く、
「選ばれる市民マラソン」の作り方。 

text by

柳橋閑

柳橋閑Kan Yanagibashi

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photograph bySHONAN INTERNATIONAL MARATHON

posted2017/12/18 08:00

湘南国際を運営の坂本雄次さんに聞く、「選ばれる市民マラソン」の作り方。<Number Web> photograph by SHONAN INTERNATIONAL MARATHON

大会のゴール付近の様子。広々としたエリアが確保されており、参加した選手たちをサポートする施設、スタッフも充実していることが分かる。

無駄なコストをかけず、いかに良い大会にするか。

「黒字化のために、運営は細部までとことん工夫しました。日本の都市型マラソンでは10億円近い予算でやっているところもありますが、湘南国際は同じ規模の大会と比べて、3分の1の予算で運営しています。そのぶんセキュリティや救護体制が弱いか、あるいは参加賞が見劣りしているかというと、そんなことはない。むしろこちらのほうが行き届いている面さえあると思っています。工夫をすれば、そういう運営ができるんです。

 自治体の主催で、広告代理店が請けおう形の大会は、どうしても予算が膨らみがちです。見ていると、そこまでしなくていいんじゃないかという面にお金を使っているケースが多々あります。

 たとえば、PRにしても、電車の中吊り広告を出したりする必要があるのかどうか? その根本のところを考えない上に、制作を下請けに出すことで、さらに経費が積み上がっていく。

 デザイン面についていえば、美術大学の学生さんにコンペでやってもらうなどの方法もあります。そうすれば、こちらは費用を抑えられ、彼らにとっては発表の場になる。そういう細かな工夫をこつこつやっていけば、トータルのバジェットはかなり絞り込めるんです。

 湘南国際の場合は、間にエージェントを挟まず協賛企業と直接交渉し、設営、警備を請けおう会社とのやりとりなど、あらゆる業務を自社でやっています。距離計測も、私がAIMS(国際マラソン・ディスタンスレース協会)の距離計測検定員の資格を持っていたので、日本陸連と協働もしました。

 無駄なコストはかけず、それでいてランナーには参加料に見合ったサービスを提供する。そのためのアイデアを四六時中考え続けることで、どうにか黒字化するためのビジネスモデルを構築することができたんです」

湘南国際が、応募を抽選方式にしない理由。

「ありがたかったのは、第1回からランナーの応募が殺到したことです。『湘南』という地名のイメージは想像以上に大きくて、回を重ねるほどに人気は増して、20分ほどで19000人の定員が埋まってしまった年もあります。

 抽選にしてほしいというご要望もいただくんですが、河野太郎さんとも話して先着順にさせていただいています。『抽選にしてしまうと、本当に出たいランナーの出場のチャンスが減ってしまう』というのが理由です。苦労して出走権を勝ち取った方は、それだけ大会にかける思いも強くなります。実際、当日の出走率はおおよそ9割を保っています。

 そうした運営の努力を重ねながら、全体の募集人数を増やすことで、収支は徐々に改善していきました。おかげさまで、いまは単年度で黒字になっています。とはいえ、けっして大きな利益が得られる事業じゃありません。続けるには精神力と体力が必要で、運営という仕事自体、マラソンに似ているかもしれません。

 こういうスタイルで大会運営を手がけている会社は、国内ではうち以外にないと思います。業界では大手の『アールビーズ』(雑誌『月刊ランナーズ』の発行、ウェブサイト『RUNNET』を運営するなど、幅広くランニング事業を手がける会社)でも、自社運営の大会はそれほど多くない。自分たちが運営主体になって、公金を使わずに開いている大会数は、ランナーズ・ウェルネスがいちばん多いんじゃないでしょうか」

【次ページ】 他のマラソン大会とは異なる“大規模な草レース”!?

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