ニッポン野球音頭BACK NUMBER
リプレー検証の気になるグレーさ。
野球ファン納得の運用法を考える。
posted2017/11/29 11:30
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
Naoya Sanuki
11月13日、監督がリプレー検証を求めることができる新制度「リクエスト」が来シーズンから導入されることが決定した。
そのことを伝える報道を眺めていた時、少し気になる記述を目にした。スポニチが報じた制度概要の中の1つに、こう記されていたのだ。
「リプレイ映像の検証時間は『5分以内』とし、確証のある映像がない場合は審判団の判断とする」
思い出されるのは、先の日本シリーズ第2戦でのリプレー検証だ。7回裏、ホークスの中村晃がライト前ヒットを放つと、二塁走者の今宮健太が本塁にヘッドスライディングで飛び込み、ベイスターズの捕手、戸柱恭孝は右翼からの返球をつかんだミットを差し出して今宮のホームインを阻止しようとした。
球審がその場で下した判定はアウトだったが、リプレー検証の結果、セーフに覆った。アウトのままなら同点で8回の攻防に移るはずが、判定の変更によりホークスに勝ち越し点が転がり込んだ。この1点は結局、試合の決勝点となった。
判定がどちらに転がっても納得するしかないと同時に。
今宮の触塁と戸柱のタッチのどちらが早かったのかを、いまさら議論の対象とするつもりはない。筆者の知る限り、どの映像、どの写真を見ても100%の確信をもってアウトあるいはセーフと断言できる材料がなく、それほどまでに際どいプレーであったなら、判定がどちらに転がっても納得するしかないと思う。「あれがアウトだったらベイスターズが勝っていたかもしれない」などと主張するのもナンセンスだろう。
ただ、なぜ判定がアウトからセーフに覆ったのかということが、ずっと理解できずにいた。
一度下した判定を覆すには、客観的な証拠が必要だ。この試合の責任審判を務めた橘高淳は試合後、こう説明したという。
「走者の指が入っていたということが確認できたのでセーフとした。いろんな角度から5、6枚の映像で確認して、なかなか決定できる映像がなかったので時間がかかった」(日刊スポーツ)
「決定的な映像がなかなか出なかったが、かなりの枚数を流して確認できた。ミットの位置と、ホームベース上で走者の手がどの程度浮いていたのかを確認した」(スポニチ)
「(先に手がベースに入ったことを)映像で確認できたからセーフにしました。手が浮いているかとか、ミットの位置関係などを確認しました」(朝日新聞)