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サポーターを蹴り上げて出場停止!!
エブラとカントナ、その激情の世界。
text by
クリストフ・ラルシェChristophe Larcher
photograph byStephane Mantey - Action Images/Panoramic
posted2017/11/28 08:00
写真左がカントナの通称“カンフーキック”。右はエブラのハイキック。
「言語道断」「クラブのイメージを大きく損なった」
カントナが暴行に及んだのはプレミアリーグ16位のチームとの対戦に際してであり、エブラの場合はヨーロッパリーグの序盤戦、グループIでの試合であった。
どちらも表情は苛立ち、冷たい怒りが宙で弧を描いた足に込められていた。
行為それ自体には、かなりのディテールの違いがある。
カントナが怒りの矛先を向けたのは相手チームのサポーターであり、極右思想にかぶれた前科者であった。
エブラの場合は、マルセイユのアウェーゲームに常に帯同するマルセイユのサポーターグループ「ファナティックス」のメンバーのひとりだった。
世界中に配信された両者の映像に対しては、同じ言葉が浴びせられた。
「言語道断」
「クラブのイメージを大きく損なった」
などなど――どちらに対しても処罰を宣告する日にちが定められた。
マンチェスターでもマルセイユでも、クラブの幹部たちはふたりに容赦のない罰を科するものと見られていた。ふたりの唯一の違いと言えば、超ベテランの域にさしかかったエブラに対し、カントナはキャリアのピークを迎えていたことだった。
プレミアの流れを変えた、カントナのプレーの数々。
マンUに移籍して2シーズン半を過ごしていたカントナは当時28歳。
チームのキャプテンであり、2つのリーグタイトルとひとつのFAカップを獲得していた。
そのプレーのビジョンはこれまでのプレミアリーグにはなかったものであり、重ねられるゴールの数々とシャツの襟をピンと立てた姿は、彼を地元のヒーローに祭りあげメディアにも大きく取りあげられた。
オールド・トラッフォードのスタンドには、常に赤白青の三色旗がはためいていた。