フランス・フットボール通信BACK NUMBER
サポーターを蹴り上げて出場停止!!
エブラとカントナ、その激情の世界。
text by
クリストフ・ラルシェChristophe Larcher
photograph byStephane Mantey - Action Images/Panoramic
posted2017/11/28 08:00
写真左がカントナの通称“カンフーキック”。右はエブラのハイキック。
大嫌いか大好きか……カントナへの態度。
カントナに対する好みは真っ二つに分かれた。
イングランド人は、彼を称賛するか、それとも毛嫌いするか。
いずれにせよカントナは“ザ・キング”だった。そしてカントナに大きな信頼を寄せていたアレックス・ファーガソンは、彼をギグス=ベッカム=スコールズ世代を成長させるためのピッチ上の指導者と見なしていた。
だが、エブラはそうではなかった。
問題を解決するための移籍で、逆に問題児に。
エブラもまた、新しいオーナーであるアメリカ人、フランク・マッコートの“マルセイユ再生プロジェクト”のリーダーとして、10カ月前にクラブに三顧の礼で迎えられた。だが、すでに36歳になるエブラがピッチに立つ姿を見る機会は、マルセイユに来る以前からそれほど多くはなかったのだ。
新生マルセイユの主軸として税抜き250万ユーロの年俸を受け取りながら、彼は相手アタッカーに悩まされるとしばしばわれを忘れて熱くなるのだった。そのポジションはチームの弱点となり、自然とレギュラーの座から外された。
チャンピオンズリーグ決勝出場5回(うち1回優勝)、プレミアリーグ5度優勝、ユベントスではスクデット2度獲得という輝かしい経歴も、衰えた姿を目の当たりにしたマルセイユのファンには何も訴えかけず、しばしば罵声を浴びるようになっていたのだった。
「僕はOM(オリンピック・マルセイユ)のエンブレムを再び輝かせるためにここにやって来た」と、今年1月にチームに加入した際、エブラは高々と宣言した。
だが、9月になるとコメントはすっかりトーンダウンして言い訳の様相を帯びた。
「僕は問題児ではない。問題の解決のためにここにいるんだ」