フランス・フットボール通信BACK NUMBER
サポーターを蹴り上げて出場停止!!
エブラとカントナ、その激情の世界。
text by
クリストフ・ラルシェChristophe Larcher
photograph byStephane Mantey - Action Images/Panoramic
posted2017/11/28 08:00
写真左がカントナの通称“カンフーキック”。右はエブラのハイキック。
共にマンUのキャプテンでマッチョな思想を持つが……。
エブラとカントナ。
性格も気質も対極な存在でありながら、ともにマンチェスター・ユナイテッドのキャプテンを務め、批判や敵意に満ちた攻撃に決して屈しないマッチョであるという点でふたりは共通している。
また、どちらもフランス代表キャプテンの腕章を腕に巻きながら、あまり名誉とはいえない去り方で代表を離れている。
カントナがカンフーキックを放ったとき、彼はフランス代表のキャプテンだった。しかし事件の後、当時の監督であったエメ・ジャケは、出場停止復帰後も2度とカントナを代表に呼ばなかった。
エブラは「クニスナ事件(南アフリカワールドカップでの、選手たちの練習ボイコット事件)」の首謀者のひとりであり、チームのキャプテンでもあった。また、スパイ狩りを敢行してチームを瓦解させた張本人だった。
その責任をとりいったんは代表を離れながらその後復帰し、2度と腕章を腕に巻くことはなかったものの、2016年にあったW杯予選スウェーデン戦を最後に引退するまでさらに49回の代表歴を重ねたのだった。
度重なる不祥事も、カントナは反逆のヒーローだった。
カントナの履歴はより波乱に満ちている。
幾つもの試合でユニフォームをピッチに投げ捨て、最初にカンフーキックを放ったのはナント対オセール戦でミシェル・デアザカリアンに対してだった。
アンリ・ミシェル代表監督(当時)への「くそ野郎」発言。
マルティニやルムール、カステンドゥック、トルコの警官らに浴びせかけたパンチの数々……。
彼を愛する人々はカントナを体制への反逆者と見なしていた。
マンUのサポーターやナイキ、ルノー、ロレアル、シャープ、ペプシといった国際イメージ戦略のため彼に広告料を支払っているスポンサーたちにとっては、カントナこそは崇高な殉教者であった。