プロ野球亭日乗BACK NUMBER
桑原将志を決して逃げさせなかった。
ラミレス監督の1番固定は愛と期待だ。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/11/10 11:30
いわゆる“逆シリーズ男”になりかけながらも、最後まで逞しく戦った桑原。この経験は必ずや、来季に生きる。
打てばチームに勢いがつく。その逆も真なり。
阪神とのファーストステージ。ノーヒットに終わった第1戦は0対2で敗れたが、雨中の決戦となった第2戦は3回に桑原の二塁打などで追いつくと、5回には桑原の四球を足場に勝ち越し点を奪って13対6で圧勝した。第3戦も1回の四球から3点を先制してステージ突破を決めている。
そして広島とのファイナルステージでも初戦を落とした第2戦は3回にキーマンの左前安打から先制点を奪って6対2で完勝すると、アドバンテージを入れて2勝2敗となった第4戦では5回にやはり桑原の同点二塁打から一気に逆転して王手をかける。第5戦も3回の逆転2ランを含む6打数3安打2打点の活躍で赤ヘルを突き放し、チームは19年振りの日本シリーズ出場を決めてしまった。
結果的にDeNAのCSの戦いを振り返ると、中畑さんの言葉に頷かざるを得なかった。
桑原が打てばチームに勢いがつく。
ただ、その逆もまた真なり。桑原が沈むとどうにもチームの歯車が噛み合わなくなってしまう。そういう逆の存在感を突きつけたのが、日本シリーズというわけだった。
シリーズ序盤、柳田と対照的に苦しんだ。
日本シリーズを追った本コラムで、ソフトバンクが3連勝した直後、「一方的な展開は『1番の差』なのか」というテーマで書いた。
この時点でソフトバンクの1番・柳田悠岐外野手は、3戦とも1回に先頭打者として安打で出塁し、それが先制点に結びついていた。
一方の桑原は13打数無安打で第2戦での4連続を含む6三振。出塁したのは第3戦の第1打席の四球だけという惨状だった。
当然のごとく、1番の入れ替えも俎上に乗せた。9番の倉本寿彦内野手が当たっていたので、倉本との入れ替えではどうかという趣旨のことを書いた。シーズン中からアレックス・ラミレス監督は8番に投手、9番に倉本を入れ、打線が1巡したら9番打者が1番になるという発想でオーダーを組んできた。
ならば1番と9番を入れ替えれば、桑原にはいきなりの重圧も無くなり、気分転換にもなる。それで打順が一回りすれば、その存在も生きるという発想だったわけだ。