プロ野球亭日乗BACK NUMBER
桑原将志を決して逃げさせなかった。
ラミレス監督の1番固定は愛と期待だ。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/11/10 11:30
いわゆる“逆シリーズ男”になりかけながらも、最後まで逞しく戦った桑原。この経験は必ずや、来季に生きる。
ラミレス監督は桑原を決して逃げさせなかった。
いまのDeNAは筒香嘉智外野手と宮崎敏郎内野手がいて、かなり高いレベルで打線の軸はできつつある。この2人にホセ・ロペス内野手を加えたクリーンアップは、他チームに比べても破壊力で劣ることはない。その破壊力をさらに倍加させるのが、1番打者なのである。桑原が経験を積み、出塁率を上げて本当のリードオフマンとして成長することなのだ。実は来季のDeNA打線の最大のテーマがそこなのである。
本当に勝てるチーム、名実ともにリーグ優勝を目指し、日本一を目指せるチームになるために、だからラミレス監督は桑原を決して逃げさせなかったのである。
その中で桑原も第4戦では初安打など2安打を放ち、5、6戦でもそれぞれ1安打をマークしてシリーズに足跡は残した。
「練習するしかない。とにかく練習してチームを引っ張っていける選手になりたい」
ソフトバンク・工藤公康監督の胴上げを目の前で見た桑原はこう唇を噛んだ。
そしてラミレス監督は言う。
「こういう形で負けはしたが、これは負けではない。得るものがあった1年だった」
したたかな指揮官は、目の前の敗北の代償として、本当に日本一を目指すため桑原に経験を積ませた――それが頑なに「1番・桑原」を替えなかった理由だと読める。