スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
競技力と言葉の豊かさは比例する。
日本サッカーを見続ける92歳に学ぶ。
posted2017/10/15 09:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Takuya Sugiyama
サッカー日本代表とハイチとの一戦。
2-0から2-1になって前半戦が終了。
2-2。
2-3。
あれ?
あらゆる意味で不安が増殖していく。
このままで、大丈夫なんだろうか?
アディショナル・タイムで、ようやく3-3。
ワールドカップ・ロシア大会は、2018年6月14日に始まる。あまり、時間はない。
強化現場に比べれば、ファンにはたくさん時間がある。そんな時は、スマホも脇に置いて、読書を。スポーツの読書は「観戦能力」をアップさせてくれる。
特にサッカー本は、様々な言語で書かれており、翻訳も他競技に比べると充実している。今回は、日本のサッカーを考えるにあたって、最良のテキストを取り上げてみたい。
1924年というから大正13年生まれ、ワールドカップの取材は実に10回を数える賀川浩さんの、『このくにのサッカー 賀川浩対談集』(苦楽堂)である。
日本サッカー発展の鍵は「言葉」と「共存」にある。
賀川さんは神戸一中(当然、旧制中学のことだ)時代に全国優勝のメンバーだった。従軍経験もあるが、戦後は新聞記者、平成になってからはフリーランスとしてサッカーを俯瞰してきた。
この本では、あらゆる形でサッカーに関わってきた14人との対談が収められているが、いずれもヒントに富む内容で読んでいて楽しい。
私が読み通して感じたのは、日本サッカー発展の鍵は「言葉」と「共存」にあるのではないか、ということだ(実は、これはサッカーに限った話ではなく、様々な競技についても言える)。