猛牛のささやきBACK NUMBER
「過去の栄光引きずってましたね」
オリ吉田凌が乗り越えた“あの頃”。
posted2017/10/12 07:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
オリックスは10月9日、今シーズンの公式戦全日程を終えた。今季の成績は63勝79敗1分の4位。最下位に終わった昨年に比べれば順位も勝率も上がったが、3位の楽天には10ゲーム以上の差をつけられ、到底だれも納得のいく成績ではなかった。
「連勝連敗が続いて本当に苦しいシーズンだった。4月はよかったが、5月に入って投打のバランスが崩れていった」
福良淳一監督は10月7日の本拠地最終戦で今季の総括を行った。
若手野手の伸び悩みを大きな課題と語った一方で、1、2年目の若い投手陣の活躍は収穫として、先発の山岡泰輔、リリーフの近藤大亮、黒木優太、小林慶祐の名前を挙げた。彼らに加え、8月には高卒ルーキーの山本由伸も一軍に昇格し、8月31日にプロ初勝利を飾った。
そうした若手投手陣の波に乗り、シーズン最後に一軍のチャンスをつかんだのが、プロ2年目の右腕・吉田凌だった。
小笠原と夏の甲子園を制覇し、プロ入りも。
吉田は東海大相模高3年の時、左のエース小笠原慎之介(中日)との二枚看板で夏の甲子園制覇を成し遂げた。
その年のドラフト5位でオリックスに入団。1年目の昨年はウエスタン・リーグで2勝2敗、防御率5.79と苦しんだが、今年は16試合に登板し6勝5敗、防御率2.37。特に前半は、6月途中まで防御率0点台を維持し抜群の安定感を発揮していた。
「真っすぐがよくなったからだと思います。真っすぐでファールや空振りを取れることが増えて、スライダーだけに頼らなくていいのが大きい」と吉田は語っていた。
今年は小林宏二軍投手コーチ(現・一軍投手コーチ)と二人三脚でシャドーピッチングを繰り返し、フォームを安定させたことでストレートの威力が増したという。
もともと変化球は得意で、特にスライダーは、例えばファールを打たせたい時は軽い変化、三振を取りたい時はもう一段階大きく曲げるというふうに、目的に応じて変化を巧みに使い分ける。ストレートの威力が増したことで、そうした変化球がより活きるようになった。