猛牛のささやきBACK NUMBER
「過去の栄光引きずってましたね」
オリ吉田凌が乗り越えた“あの頃”。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2017/10/12 07:00
一軍初登板はほろ苦いものとなったが、二軍では安定した成績を残したのも事実。吉田凌は来季を飛躍の3年目とできるか。
めちゃくちゃ緊張した初登板は厳しい結果に。
夏場に調子を落としたが、前のめりになっていたフォームを修正し、ウエスタン・リーグの最終登板となった9月21日のソフトバンク戦で初完投初完封を達成。10月3日の日本ハム戦でついに一軍デビューを果たした。
ドラフト1位で中日に入団した盟友・小笠原は、一軍ですでに7勝を挙げている。吉田は小笠原へのライバル心を隠さない。一方で、最も認めている存在でもある。
小笠原は昨年5月31日のソフトバンク戦で初先発し、5回1安打1失点と好投した。
「高卒1年目でいきなりソフトバンクを相手にあんなピッチングができるなんて、単純に『すげーなー』って。心の底からそう思っちゃった自分がいました。ああいう舞台でも平常心で投げられるから、なんだかんだゲームを作れる。自分がパッと行けと言われても、あんなピッチングできない。高校時代にあった差はこういう差なのかと思いました」と吉田は話していた。
そしてプロ2年目、吉田凌に巡ってきた初登板。
「めちゃくちゃ緊張しました」と言うが、1回はストライクゾーンで思い切りよく勝負し、三者凡退と好スタート。「変化球でカウントを取れたり打ち取れていたのでよかった」と振り返った。
しかし2回に2点を失うと、3回にもスライダーやフォークを捉えられて2点を追加され降板。初登板は2回2/3、6失点という結果に終わった。
本人は真っ直ぐに自信がなかったようだが……。
「真っすぐを使えなくて、変化球頼みになったところをしとめられた」と吉田は反省する。
真っすぐを使えなくなった理由は「自信がなかったから。まったく指にかかっていなくて、本来の真っすぐとは全然違っていました」と話した。
その日、吉田と同じくプロ初出場となった捕手の飯田大祐はこう悔やむ。
「僕はそんなに真っすぐが悪いとは思わなかった。だからイニングの合間にも『やっぱり真っすぐを投げないと凌のいい変化球が活きてこないから、頑張ってもうちょっと投げようか』という話をしてたんですけど、ことごとく首を振られてしまった。スライダーもフォークもいいボールがきていただけに、真っすぐがあればもっと……。初めてだから凌が投げたいボールを優先したのですが、僕が無理にでも投げさせたほうがよかったかなと思う。僕にも押し切れる強さがないとダメだなと感じました」