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筒香嘉智の打点と本塁打を調べる。
「自分で決める」意識こそが大敵?
posted2017/10/12 11:00
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
Kyodo News
ベイスターズでいま最もホットなトピックはと聞かれれば、細川成也のCS帯同が決まったことなのかもしれない。
明秀学園日立高校からドラフト5位で入団した、プロ1年目の19歳。
試験的に起用された公式戦ラスト2試合でホームランを連発した右打者はたしかに、手薄な代打陣を補強する重要なピースになろうとしている。
だが、このルーキーをCSのキーマンだと囃し立てるのは順序が違う気がする。短期決戦の行方を左右する存在としてまず挙げるべきは、やっぱり筒香嘉智だと思うのだ。
筒香の今シーズンの最終成績は、打率.284、28本塁打、94打点。タイトルとは無縁に終わった。8月の月間MVPに選ばれはしたが、どんなに好調な時期でも、すぐ背後に不調の影が寄り添っているような危うさが最後まで消えなかった。
一本出れば逆転。
ここが主砲の腕の見せどころ。
ファンがそう願う場面で、強振されたバットは空を斬り、期待に応える結果を示せた試合が少なかった印象は拭えない。
競った展開での打点が減っている?
印象ではなく、事実としてどうだったのか。今シーズンの筒香は勝負強かったのか、否か。気になって細かく調べてみることにした。
俎上にのせるのは打点だ。打点をマークしたシチュエーションごとに振り分け、昨シーズンと比べてみる。シチュエーションの分類は「追い上げ=ビハインドの場面で、同点には追いつかなかった打点」「同点=同点となった打点」「勝ち越し=同点の場面での勝ち越し打点(先制も含む)」「突き放し=リードの場面で、突き放した打点」の4種類。たとえば0-2のスコアの時に満塁ホームランを打ったとすると、「追い上げ」1点、「同点」1点、「勝ち越し」1点、「突き放し」1点とカウントする。
あくまで個人集計の数字だが、結果はこうなった。
<2016シーズン=110打点>
追い上げ:23打点 同点:11打点 勝ち越し:27打点 突き放し:49打点
<2017シーズン=94打点>
追い上げ:16打点 同点:9打点 勝ち越し:20打点 突き放し:49打点
全体としては昨シーズンに比べて16打点減っているが、その減少分のうち「追い上げ」が7打点、「勝ち越し」が7打点を占めた。一方、「突き放し」は変わらず。
何とかして追いつきたい、競った場面で勝ち越したい。そんな打席でもがいた表れ、と見ることができるのかもしれない。