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「過去の栄光引きずってましたね」
オリ吉田凌が乗り越えた“あの頃”。 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byKyodo News

posted2017/10/12 07:00

「過去の栄光引きずってましたね」オリ吉田凌が乗り越えた“あの頃”。<Number Web> photograph by Kyodo News

一軍初登板はほろ苦いものとなったが、二軍では安定した成績を残したのも事実。吉田凌は来季を飛躍の3年目とできるか。

「ヤバイ、小笠原に抜かれた」と思った日。

 この試合が吉田の今季最後の公式戦となった。

 悔しいデビュー戦となったが、今の力を測ることができ課題が明確になったことは来年につながる。何より今年、吉田には大きな収穫があった。

 ルーキーだった昨年、吉田はよく高校時代、特に高2の時のことを誇らしげに話していた。

「横浜高校の渡辺(元智)監督(当時)にも『1、2年の頃は小笠原君より吉田君のほうがよかった』と言われました。『あの頃ならドラフト1位だったのにな』って」

 吉田は2年の夏に最速151kmを記録し、神奈川県予選決勝の向上戦では20奪三振でチームを甲子園出場に導いた。

 ところがその後、腰の分離症に苦しんだ。2年の冬はまともに練習ができず、フォームも崩れてしまった。

「その間に小笠原がバンバン鍛えて、球もめちゃくちゃ速くなっていた。でも自分は野球ができない。焦りました。『ヤバイ、小笠原に抜かれた』と思いましたね。3年生では立場が変わりました」と悔しそうに語っていた。

 プロ入り後の最速は146km。高校2年の記録には及ばない。昨年は「あの頃(高2)はよかった」、「あの頃の自分に戻りたい」ともらしていた。“151kmを出した自分”、“小笠原よりすごかった自分”への執着が強かった。

トータルで見れば今の自分が負けることはない。

 しかし今年、ファームで勝ち星を重ねる中、“今”の自分に手応えを感じるようになった。ピンチでも動じず、一歩大人のマウンドさばきを見せるようになり、発言も変わった。

「そりゃ、あの頃はよかったです。でもそれは真っすぐだけの話。真っすぐだけを見れば、高校1、2年の頃の方がよかったと思いますけど、トータルで見れば(今の自分が)負けることはない、勝ってるんじゃないですかね。

 あの頃はただひたすら投げるだけ、スライダーさえ投げておけば相手が勝手に振ってくれるという感じだった。でもプロはそういうわけにいかない。だから、今の方がいいのかなと思います。

 まあただ、あの真っすぐを投げられた自分がいたということは、投げられる力はあったということなので、それならそこまでもう一回上げたいなという気持ちが、真っすぐに関してはあります。それだけですね」

【次ページ】 「過去の栄光をだいぶ引きずっていましたからね」

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