マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
甲子園だけじゃない高校球児の8月。
人生を決める大学セレクションとは。
posted2017/08/15 11:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Yuki Suenaga
8月の高校野球は“甲子園”だけじゃない。
惜しくも7月の地区予選で敗れた高校チームは2年生、1年生で「新チーム」を結成してすでに練習に練習試合を重ね、秋の大会のさらに向こうに来春の「センバツ」を仰ぎつつ、汗を流す毎日だろう。
ならば夏で現役を退いた3年生たちは、今ごろどうしているのだろうか。
“勝負野球”は高校まで。卒業したあとは、行った先で楽しみとしての野球を……と考えている者たちは、高校最後の夏休みをそれぞれに、思うままに過ごしているだろう。
一方で、進学した先でさらにハイレベルの野球にガチで取り組んでやろう! と心に決めている者たちには、予選のあとの8月にもう1つの戦いが待っている。
学生野球への登竜門、いわゆる「セレクション」というやつだ。各大学の野球部が、来春の入部希望者を対象にして行なう練習会である。
前回このコラムでお伝えしたように、大学野球部には、3年夏の時点ですでに“当確”になっている高校球児がいる。そしてそのほかにも「我こそは!」と野球部の門をたたく高校球児が大勢いる。
そんな若き“野武士”たちが一堂に集合し、監督さんほか野球部に関わる人たちの前で、3年間磨いてきた腕を披露するのだ。
ひとりの青年の方向性が決まる8月なのだ。
当然そこには採点と評価があり、その向こうに結果がある。
「ぜひ、本学へ……」「ほかは受験しないでいただきたい……」。そんな回答を得た者は内々定となるが、反応を得られなかった者は、次の進学先候補のセレクションにまわることになる。
進んだ大学で人生の方向を見つける。よくあることである。
失敗を環境のせいにする。これもよくありがちな風景であろう。
いずれにしても、ひとりの青年の一生の方向性が定まる8月なのだ。