マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
甲子園だけじゃない高校球児の8月。
人生を決める大学セレクションとは。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byYuki Suenaga
posted2017/08/15 11:30
高校野球からそのままプロ入りする選手は、育成契約を除けば2016年ドラフトでは40人に満たなかった。大学は大切な受け皿なのだ。
自分の守備を見せているか、他人の守備を見ているか。
同様に、その選手のプレーを見ていると、その選手の“日常”が見えてくる。そういう選手は、こちらからお願いしても来てほしい。
その監督さんは、そんな表現をしてくれた。
「面白いんですよ。たとえば、守備力を見るのにシートノックをやるじゃないですか。甲子園でいくつも勝ってちょっと有名になってる選手って、自分が打球をさばいているところを他の選手に見せている。そんな感じで、人のプレーはほとんど見ていない。逆に、人のフィールディングをジィーッと食い入るような目で見ている選手が、たまーにいる。こういう選手を探すんです、僕は。もっと上手くなりたい、上手いヤツって自分とどこが違うんだ……そういう“飢えた”感じの選手。今はなかなかいませんけどねぇ。でも、たまーにいるんです」
上手く見えることと、心をつかむことは同じではない。
どうしてあんなに歌の上手い人が売れないのか。芸能界には、そうした現象がいつもあるという。
一見上手く見えたり、聴こえたりするのだが、なぜか見る者、聴く者の心を打たない。
ひとつの技能に、人の心をぐっとつかんで放さない“説得力”を持たせるには、果たしてどうすればよいのか。
真夏の炎天下。最後の夏も終わったのに、あいかわらず汗と泥にまみれて奮闘する高校3年生。そんな学生野球のセレクションのひと場面に、その答えのようなものが潜んでいるのかもしれない。