プロ野球亭日乗BACK NUMBER
日本人打者の天敵、動くボール。
WBC後の命題は“逆方向の引っ張り”。
posted2017/03/30 17:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Naoya Sanuki
「アメリカのために戦うという選手だけを集めた」
第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で優勝したアメリカチームを率いたジム・リーランド監督の言葉である。
米国でのWBCの盛り上がりは、日本には遠く及ばないのは確かに事実だった。大会真っ最中も、新聞の1面やテレビのスポーツニュースのトップは全米大学バスケットボールのファイナル4の話題で、WBCのニュースは2番手、3番手に追いやられていた。
ただ、それでも少しずつだが、野球の国際大会として着実に歩を進めていることも感じられる。主催者発表では4回目の開催で過去最多の108万6720人の観客を動員。決勝の米国対プエルトリコ戦は史上2番目の5万1565人が入場し、全米で310万世帯が視聴したという。
「WBCは野球の国際化に非常に重要な大会。次回以降も100%継続させる」
来日したメジャーリーグ機構(MLB)のロブ・マンフレッド・コミッショナーはこう公言し、4年後の2021年には第5回大会が開催されることもほぼ確実となっている。
少しずつだが、アメリカが本気になってきている。
そこで意味を持つのが、冒頭で書いたリーランド監督の言葉だった。
米国代表は、この老将の言葉に呼応した。1次ラウンドのコロンビア戦では2年連続2冠王のノーラン・アレナド(ロッキーズ)が一塁にヘッドスライディングを見せるなど、選手たちが随所に気迫のプレーを見せた。まだまだ起用などに様々な制約がある中、それでも優勝までたどり着いたのは、この老練な監督の手腕と、それに応えた選手たちの“熱”だったことは間違いない。
少しずつだが、アメリカが本気になってきている。そうなると日本が本気で世界一奪回を考えるなら、根本的に取り組まなければならない問題がクローズアップされる。