プロ野球亭日乗BACK NUMBER
日本人打者の天敵、動くボール。
WBC後の命題は“逆方向の引っ張り”。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2017/03/30 17:00
米国戦では山田が送りバントをするなど、小技には長けている。だからこそ今後は世界仕様の打撃技術を身につける時である。
継投策は互角以上も、打線が完璧に抑えこまれた。
準決勝の米国戦。先発の菅野智之(巨人)から千賀滉大(ソフトバンク)、平野佳寿(オリックス)、宮西尚生(日本ハム)、秋吉亮(ヤクルト)と5投手をつないだ投手陣は、強力なアメリカ打線と互角以上に渡り合った。
「日本の最大の武器は投手力を中心にしたディフェンス」という小久保裕紀監督の言葉通りに、ここまでは日本が描いたゲームプランだった。
しかし、想像以上に打線が打てなさすぎた。
散発4安打で菊池涼介(広島)のソロ本塁打による1点だけ。これでは勝てるわけがない。おそらく小久保監督も、これほど抑え込まれるとは思ってもいなかったはずである。
しかも、相手投手の調子が抜群に良かったわけではないところが問題なのだ。この極端な貧打こそが、この大会で改めてクローズアップされた日本野球の弱点である。
対応できるタイプの筒香や菊池が、芯で捉えていた。
問題は動くボールへの対応だった。
この試合である程度メジャー投手の投球を捉えていた打球は、6回の菊池の本塁打以外には1回の筒香嘉智(DeNA)の左直と3、5回の秋山翔吾(西武)の投直と中直、4回の坂本勇人(巨人)の右直と、そして8回の内川聖一(ソフトバンク)の右前安打の6本だった。
この数少ない打球の中に、1つのヒントが隠されていた。
大会中にこのコラムで「対応する打撃と決めにいく打撃」という日本打者の分析を書いた。そこで「対応できる打撃」の打者として何人かの名前を挙げている。それが筒香であり菊池であり、この米国戦で少なくとも芯で捉えた打球を放った打者たちなのである。