プロ野球亭日乗BACK NUMBER
日本人打者の天敵、動くボール。
WBC後の命題は“逆方向の引っ張り”。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2017/03/30 17:00
米国戦では山田が送りバントをするなど、小技には長けている。だからこそ今後は世界仕様の打撃技術を身につける時である。
勝負を分けたのは、やはり力以外の何者でもなかった。
もちろん日本人投手の回転のいいフォーシームや軌道が一定しているスライダー、カーブやフォークなどの変化球を打つ技術は抜群に高い。だからこそ山田は2年連続トリプルスリーの偉業を達成し、中田も松田も日本でハイレベルの数字を残している。
ただ、そういう綺麗な球筋ではなく、メジャーの投手が投げる汚い球筋のボールをどう打ち崩せるようになるか。そしてそういう打撃ができるかどうかを見極めることが、代表編成でも1つのポイントになるということだ。
それが日本人打者の、日本球界のこれから4年間の課題なのである。
そのことを一番、自覚しているのは当の選手たちだろう。
日本のために戦いたい――侍ジャパンに結集した28人の選手のその心意気は、勝った米国代表にも負けずに強かったはずである。だからこそ逆に勝負を分けたのは、やはり力以外の何物でもなかったと認めざるを得ない。
貴重な経験をもとに、各球団に戻ってどう進化するか。
「対応していくために(足を大きく上げる)フォームを変えないといけないかもしれない」
試合後に山田はこう語っていた。
敗北を真摯に受け止め、これまでの実績を捨て、さらなる進化のために何ができるのか。世界で勝つために、山田が考えたことだ。侍ジャパンで日の丸を背負って戦ったからこそ、得られた変化のチャンスだった。その思いを胸に山田だけでなく、筒香も中田も、菊池も松田もチームに戻ったはずである。
長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督は、日の丸を背負って戦った選手たちを「野球の伝道師」と呼ぶ。国際試合で日の丸を背負い、誰もが経験できないような貴重な経験をした彼らが、今度は日本のファンの前で新たな野球の魅力を伝えてくれるからである――。
そんな選手たちが各チームに散って、3月31日、日本のプロ野球が開幕する。