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キタサンブラックが年度代表馬に!
ディープ以来の「客を呼べる馬」。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2017/01/13 08:00
キタサンブラックは、名前の通り濃い目の鹿毛が印象的だ。今年はロンシャンで『まつり』を聞くことができるか。
逃げて突き放したジャパンカップは強烈だった。
キタサンブラックの昨年のローテーションを振り返ると、大阪杯2着、天皇賞・春1着、宝塚記念3着、京都大賞典1着、ジャパンカップ1着、有馬記念2着と、年間を通じてきわめて高いレベルの走りを見せた。なかでも、逃げて最後に突き放したジャパンカップの印象は強烈だった。
それに対してモーリスは、チャンピオンズマイル1着、安田記念2着、札幌記念2着、天皇賞・秋1着、香港カップ1着と、こちらも安定した強さを見せたが、国内で勝ったのは天皇賞・秋だけだったので、印象面で弱くなってしまった。また、安田記念と札幌記念の負け方も、ファンの期待が大きかったぶん、落胆も深くなった感がある。
サトノダイヤモンドは、空前のハイレベルと言われた世代で、春からずっとトップ争いをしてきたのだから立派だ。GI2勝がダービーと有馬記念だったら、もっときわどい勝負になっていたかもしれない。もちろん、菊花賞と有馬記念という格の高いGIを勝ったことは評価されるべきだが、有馬記念に関しては、2着のキタサンブラックが「負けて強し」という強い印象を残したこともあり、及ばなかったような気もする。
オグリ、ディープ以来の「客を呼べる馬」。
と、いろいろ言ったが、1年を通じて日本の競馬界の顔だったのは、間違いなくキタサンブラックだった。病を押してファンの前で『まつり』を熱唱した北島オーナーと、この馬の強さを引き出した武の存在も大きい。
武が言っているように、キタサンブラックは、オグリキャップやディープインパクトと同じような国民的スターホースになった。久しぶりに登場した「客を呼べる馬」だ。「この馬の走りを見たい」と多くのファンに思わせる力を持っており、それが年度代表馬の勲章になった。
この馬は、母の父がスプリント王のサクラバクシンオーなのに、菊花賞と天皇賞・春を勝った。「血の力」を超越する「個の力」を持った希有なサラブレッドなのである。
人気先行型とは逆の「実力先行型」で、14戦8勝2着2回3着3回という素晴らしい戦績でありながら、1番人気に支持されたのはデビュー12戦目、昨年の京都大賞典が初めてだった。自分の強さをずっと見せつけて周囲に実力を認めさせたところも、この馬ならではの「本物感」につながっている。