“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
10年ぶりのU-20W杯は超重要!
五輪の比じゃない世界の真剣度。
posted2016/10/25 12:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
AFLO
ついに重く閉ざされていた世界への扉をこじ開けた――。
AFC U-19選手権準々決勝・タジキスタン戦。5バックを敷いて来る相手に対し、U-19日本代表はサイドを起点にしながら、岩崎悠人と小川航基のツートップの積極的な裏への仕掛けを活かし、人口密度が高いバイタルエリアを頭脳的に切り崩しにかかった。
8分に右サイドでボールを受けたMF堂安律のクロスを、ファーサイドで小川がヘッドで押し込む。この試合のポイントであった先制点を早い段階で奪えたことで、試合は楽に運ぶことができた。
19分にはMF三好康児の左からの折り返しを受けた堂安が鮮やかなミドルシュートを沈めて、すかさず追加点を奪う。後半に入ってもペースを握り続ける日本は、73分に小川が直接FKを決めて試合を決定付けると、88分には岩崎が強烈なシュートを決めて、4-0の盤石の勝利。
内山篤監督率いるU-19日本代表は、実に10年ぶり、5大会ぶりのU-20W杯の出場権を掴み取ったのである。
サッカー界では、五輪で活躍しても、もう遅い!?
この勝利が持つ意味はとてつもなく大きい。
日本が掴みとったU-20W杯こそ「育成年代最後かつ最高峰の世界大会」であり、この大会に出る、出ないは、日本サッカー界の行く末を大きく左右すると言っても過言では無い。
これは決して大げさな表現ではない。
多くの人はオリンピックを「育成の大会」だと思っているかもしれない。確かに23歳以下という年齢制限があるにはある。しかし、昔から尊重されてきている世界大会は、あくまでU-17W杯、U-20W杯、W杯の3つのカテゴリーなのだ。
サッカーの世界において、オリンピックに出場している年齢の「23歳」は「もう頭角を現していないとおかしい年代」であり、すでに数人はA代表に定着して、所属クラブなどの状況によっては五輪代表に招集できないような高いレベルにいないといけないのである。その中でトップの1つ下のレベルの選手達が五輪代表活動を通じて成長し、下から突き上げて行くのが理想の形である。五輪は決して「育成の登竜門」ではないのだ。
それが証拠に、世界のプロスカウト達が集結するのは、U-17W杯、U-20W杯なのである。五輪以降に頭角を現してくる選手は、そういったことを考えると「ごく稀」なケースとなるのだ。