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あの松井秀喜が苦しみつづけ、
筒香嘉智が克服した「欠陥」とは? 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byNaoya Sanuki

posted2016/08/05 11:30

あの松井秀喜が苦しみつづけ、筒香嘉智が克服した「欠陥」とは?<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

7月には月間で16本塁打を記録した筒香。王貞治の15本を上回り、阿部慎之助らと並ぶ月間本塁打の日本人歴代最多タイ記録となる。

昨季、左方向への本塁打が1本もなかった筒香。

 ミートポイントを近くに寄せて、後ろ足を軸に回転して打つメジャー打法。

 この打ち方はボールの変化を最後まで見極められる反面、ポイントが近い分だけ、軸をしっかり保った鋭い回転力と最後にボールを押し込めるパワーがないと打球は飛ばない。

 特に外角球を遠くに飛ばすには、最後にボールをしっかりとバットの芯に乗せて振り切れるパワーと技術が求められることになる。

 昨年までの筒香は逆方向に逆らわずボールをミートする技術はあったが、そこできっちりボールを捕まえて遠くに飛ばせるパワーとテクニックはまだ感じられなかったのである。

 実際、昨年の24本塁打は、右方向が21本で中堅方向が3本。左方向への一発は実は1本もなかった。

 もちろん筒香自身もそういう現実をしっかりと見据えて、そこからどう進化するのかを模索し続けてきた。その結果が今年の打球方向にはしっかりと現れているのである。

この男は愚直だが、もしかすると……。

「何年もかけて取り組んできたことがモノになりつつあるのかなと思う」

 開幕直後の4月1日の阪神戦で左腕の能見篤史投手から左中間スタンドに3号ソロを放った筒香は、その一発をこう評価した。

 そうして8月3日現在で放った33本塁打のうち、センターから左方向への打球が実に11本と激増している。そのうち8本は左中間からレフトスタンドに飛び込んだもので、確実に狙って左へ本塁打を打てる打者へと進化しているのである。

 もちろん松井秀喜という稀代のホームランバッターとの比較は、経験、実績、また打者としての存在感という点で、まだまだナンセンスかもしれない。

 ただ、である。

 左方向への打球では恐らく筒香は松井さんよりも“器用”さがあるのは確かだ。と、同時にこの男は愚直だが、牛歩のような歩みでも一歩、一歩階段を登って打者としてのスケールを大きくしていける。そこのところは松井さんと同じ才能を感じるのである。

 スラッガーとしてどこまで大きくなれるのか。その進む道に興味を持たずにはいられない。

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