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酒井高徳が感じていた「こんなもん」。
消えた向上心は、いかに復活したか。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2016/04/12 10:40
長らくドイツ、代表でのプレーを観ているので忘れがちだがまだ25歳。伸びしろは存分に残されている。
「試合を壊してしまった」ことで失ったチャンス。
昨年3月13日のレバークーゼン戦で、59分に4失点目を喫した直後に酒井は交代を命じられた。試合途中の交代が少ないサイドバックが、ベンチに下げられるのはよほどのことだ。
「試合を壊してしまった」
試合後、酒井は何度もそう口にしていた。そして、その試合がシュツットガルトでの最後の試合となった。そこからの9試合、チームが残留争いを戦うピッチに立つチャンスは一度も与えられなかった。
そして、シーズン終了後にHSVへ移籍することになった。
原点の「アイツは頑張っている」と伝わるプレーを。
「あれからは、自分がどういう選手で、どうやって今まで生きてきたのかということを考えました。そのなかで、試合でも練習でも、一切気を抜かずに100%でやるというのが、オレの今までのスタイルだったと思い出したんですよね。
走って、走って、走って。ボールもらうために、声を出して。『アイツは頑張っているんだ!』と周りにはっきりと伝わるくらいに100%でプレーする。そんな当たり前のことが出来れば、自分はまた戻って来られると思うようになりました」
もちろん、HSVに来てすぐに結果が残せたわけではない。リーグ戦に初めて出場するチャンスが回ってきたのは10月3日のヘルタ戦の後半だったし、初めて先発の座をつかんだのは11月7日のダルムシュタット戦のことだった。
「もちろんハンブルクに来てから、良い状態なのにどうして試合に出られないんだろうと思った時も実際にはありました。
でも、それは自分がシュツットガルトで試合に出られなくなった頃からの慢心のせいなんだと。なめたような態度を取る選手には、そう簡単にチャンスは回ってこないんだぞ、って。シュツットガルトで出られなくなってからは、試合に必要な筋トレやコンディショニング、それからボールを使ったトレーニングや走り込みなど、色々なものを自分でやってきました」