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酒井高徳が感じていた「こんなもん」。
消えた向上心は、いかに復活したか。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2016/04/12 10:40
長らくドイツ、代表でのプレーを観ているので忘れがちだがまだ25歳。伸びしろは存分に残されている。
「こんなもんでいいだろう」という感情が出ていた。
しばらくして、グラウンドにあったボールを片づけた酒井がほがらかな顔でやってきた。気温は13度だが、港町のハンブルクにある練習場には強い風が吹き、肌寒さを覚える。
「風の強い日はこんな感じですね。南ドイツとは違いますよ」
南ドイツにあるシュツットガルトを離れ、ハンブルクでの生活にすっかりなじんだ酒井はそう話す。そして、ハノーファー戦のあとに触れた1年弱の期間について、こう語り始めた。
「シュツットガルトでは監督が代わっても試合に出続けられて、自分のなかで『これくらいでいいな』とか、『こんなもんでいいだろう』という感情が、試合や練習のなか少しずつ出てきてしまったんですよ。何となく練習場に来て、何となく帰ることもありました。そのときには気づきにくかったのですが、今になって思えば、慢心みたいなものですよね」
昨季、シュツットガルトで直面した序列の変化。
酒井はシュツットガルトで3年半プレーしたが、2シーズン目からは毎年2部降格の恐怖を感じながらの戦いを強いられていた。3年半の間に、4度の監督交代も経験している。
それでも最初の3シーズンは、常に80%前後の試合に出場する主力選手だった。
そんな常識が崩れたのは、昨シーズンのこと。リーグ戦34試合で、酒井は18試合の出場に留まった。
「結局、ターニングポイントになってしまったのが、昨シーズンのレバークーゼン戦です。0-4で負けた試合で、全ての失点がオレのとこからでしたからね」