サッカーの尻尾BACK NUMBER
敗退率83%を覆したレアルがCL4強。
3得点ロナウド「最高の夜じゃない」。
posted2016/04/13 11:40
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph by
AFLO
試合後の会見場で、ジダンは微笑んでいた。
「いまさら何も言うことはないだろう? クリスティアーノは特別な選手。ひとりで3点も決めて突破を決めてくれたんだから。私がこれまで監督としてやってきた中で最高の夜だった」
ヨーロッパにおけるカップ戦で、初戦を2-0で落としたチームが突破する確率は17%。そんな不吉な数字も試合前に騒がれたが、終わってみればレアル・マドリーは2ndレグを3-0で勝ち、6シーズン連続のチャンピオンズリーグ準決勝進出を決めた。主役はハットトリックを決めたクリスティアーノ・ロナウドだ。
数字と前例を覆すほどの勢いを、この日のロナウドは持っていた。先制点はカルバハルからのクロスをファーサイドで押し込み、コーナーキックをヘディングで合わせ、最後はフリーキックを直接叩き込んだ。
単独ドリブルで局面を切り開いたわけでも、スーパーなミドルシュートを決めたわけでもない。FKも壁の隙間を通った幸運なものだ。訪れたチャンスをシンプルに確実に決めた、スコアラーとしてのロナウドが光った。CLでの得点はこれで10試合で16点。ジダンが言うように、ベスト4進出の原動力となったのは彼にほかならない。
周囲を鼓舞し、自ら率先してプレスに走った。
ロナウドがベルナベウを沸かせた要因の1つには、その献身性もあった。前線から相手を全力で追いかけ回し、チームメイトだけでなくスタジアム全体を奮い立たせた。攻撃だけでなく、前線からの守備においてもこの日のロナウドは鍵だった。
後方から見ていたセルヒオ・ラモスは言う。
「そもそも、90分間高い位置から激しいプレッシングを掛け続けることが不可能なのはわかっていた。それでも、ロナウドは前から本当に頑張ってくれた」
2-0となり一旦プレスが停滞した時間にも、ロナウドはジェスチャーで「上がれ」とチームメイトを鼓舞し、自ら率先して走った。