“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
伝説のプレーが生まれる大会――。
全国高校サッカー、この選手を見よ!
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2015/12/29 11:30
市立船橋の10番・永藤歩は168cm、65kgと小柄ながら驚異的なアジリティを誇る。
平岡監督のモットー「変態を多く育てる」。
個性派と言えば大津も相当な「曲者集団」だ。平岡和徳監督のモットーは、
「変態を多く育てる」
平岡監督の言う「変態」とは、他にいないような強烈な個性を持つタレントを指す。画一的ではなく、いびつな形であっても、とんでもない個性と武器を持っている選手を育てるのだ。
「利き足が頭」という名言を残したFW巻誠一郎(ロアッソ熊本)、「イケメンのクラッシャー」と言われたCB谷口彰悟(川崎フロンターレ)、「元テコンドーの世界大会出場者」のCB植田直通(鹿島アントラーズ)は、みな大津出身者だ。今年も彼らに追随する「変態」はいる。
ガンバ大阪入団内定のCB野田裕喜は、徹底したヘッドのトレーニングや対人プレーによって、特別指定先のロアッソ熊本でJデビューを果たし、今年出場した4試合は大津と同じ5番を背負い、DFリーダーとして君臨をした。
同じくガンバ大阪入団内定のFW一美和成は、昨年の5月まではCBだった。183cmの高さとフィジカルの強さ、反転スピード、シュート力を買われ、平岡監督によってFWにコンバートされたのだ。そして、コンバートから3カ月後のインターハイでは、エースストライカーとしてチームを準優勝に導く活躍。そこから「FW一美」として、一気に年代別代表、プロ内定まで階段を駆け上がった。
さらにエレガントなトップ下の吉武莉央、脅威の決定力を誇る左MF原岡翼、高性能なプレーを見せる攻守のダイナモ・河原創と、個性的な3年生が揃う。
そして、2年生も強烈な変態になってくれそうな人材が揃う。
右MFの杉山直宏はまるで軟体動物のように相手DFの間隙をすり抜けていくドリブルを見せ、FW藤山雄生は屈強なフィジカルを持ち、正確なポストプレーを見せる。GK前田勇矢も今年からGKに再転向(中学の最初の頃までGKだったが、FWに転向)し、急成長を遂げている。
上・下級生のバランスが良いチームは強い。
この4チームに共通するのが、下級生に面白い存在がいること。3年生と下級生の融合がチームとして円滑に行われていることが、総合力の高さに現れている。
その観点で言うと、星稜、京都橘、桐光学園、國學院久我山も面白い。
前年度の優勝メンバーがごっそり抜けた星稜は、この1年を通じて2年生が急激に伸びて来た。瞬間的な駆け引きに秀で、強烈な左足を武器に高い決定力を誇るFW窪田翔。181cmの高さを誇り、インターセプトに秀でたボランチの川渕陸。独特の間合いのドリブルとキックの正確性を持ち、左サイドで起点となるMF片山浩など、2年生がスタメンの半分を占める。この2年生の出来がチームの浮沈の鍵を握っている。