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DeNAの第二幕はどこへ向かうのか?
球団社長に来季戦略を直撃!
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/11/18 10:30
ラミレス新監督は早速指導を開始している。ゲッツも封印して、来年はどんなスタイルに?
生え抜きを横浜で引退させられない、という問題。
先んじて今年、巨人に移籍した金城龍彦は4月15日のハマスタで決勝スリーランを打ったが、彼もまた長年チームを支えてきた功労者。昨年“ボタンの掛け違い”からFAを行使して巨人に移籍したが、今年引退してそのまま巨人の3軍コーチへの就任が発表された。
前親会社時代、このチーム最大の失策だったのが、生え抜きの功労者をベイスターズで引退させることができなかったこと。親会社がDeNAに変わったことで、この悪しき習慣は改善されると期待していたのが、この流れは本当に断ち切れたのだろうか。
「これまでの歴史を振り返っても、全部が全部そうであるべきだったとは言いませんが、残ってもらうべき生え抜きを残し、不必要にFAで出て行かれず、監督コーチ人材として素養のある生え抜き人材を育ててこられなかったことが、この球団の弱かったところだと認識しています。
伝統ある球団とは、ドラフトで獲得した生粋の生え抜き選手が、現役生活をまっとうして引退し、やがて指導者になったり、あるいはチームを作る編成側にまわる。そういった、人と球団が共に歩んで成長するカタチが、この先十年以上にわたってこの球団の中で定着しない限り、伝統や文化を持った、ベイスターズの野球が確立しないでしょうし、ファンからも安心感のあるチームと球団にはなれないと考えています。
生え抜きの選手の中から、指導者や更にその先の素養を持った選手がこのチームの未来を担っていってもらいたい。今はチームが成長し始めてまだたったの4年が終わったところです。チームとして強化を進めるのと同時に、組織としてこれからのチームづくりを担えるための人材を育てることは、まだまだ始まったばかりです」
金城にはコーチの打診をしていたが……。
それは言い換えれば、ドラフトで指名する選手にも、引退して指導者やフロントに入る選手にも、単純な選手としての能力だけではなく、後々に球団を作っていくための人格や素養も求めているということになるのだろうか。
「そんなことまで考えて指名はしません。『この選手は球団の未来も担っていける人材だ』と思える人材は限られますし、長い選手生活でそういった素養が育ってくる選手だっていると思います。コーチ人材を選ぶことは本当に難しいと思います。選手から見て、『あの人は選手のときもちゃんとしていたから』と選手時代の姿勢の部分で認められない限り、まずコーチの候補にはなりません。
さらにそういった素養があったとしても、現役選手としての強い思いで、チームを自ら出て行ってしまうこともあります。例えば金城選手の場合、球団としては練習に対する姿勢から、さらには実績からも、未来のDeNAベイスターズを担う候補として、“当球団でコーチをしてもらいたい生え抜き選手”でした。それでコーチ就任をお願いさせてもらいました。
シーズン後半にこういったことを選手に伝えることにならざるをえないのですが、コーチ就任の裏にある引退ということまでを十分に考えてもらうためのタイミングとしては、選手にとっては遅かったのか……。私たちとしては“コーチとしてこれからも力を貸してほしい”と伝えたつもりが、金城選手の中では“戦力として考えていない”という理解がまさってしまったようでした。残念でしたが、選手としてまだまだ出来ると考えている以上、埋まらない溝があったのでしょう」