野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
DeNAの第二幕はどこへ向かうのか?
球団社長に来季戦略を直撃!
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/11/18 10:30
ラミレス新監督は早速指導を開始している。ゲッツも封印して、来年はどんなスタイルに?
人材育成で監督が望まない組織になる危険は?
人材を育てるという名目の下、これまでは小池正晃、新沼慎二、嶋村一輝など現役を引退してすぐの生え抜き選手がコーチとして組閣に名を連ねてきた。しかし、球団主導で人を育てるということは、中畑監督が辞任に至ったと噂される某DB氏(歌舞伎町)の入閣拒否のように、監督個人が望む組閣要望とは乖離する危険性も孕んでいる。
人を育てながら勝つ。どこの組織もが直面するこの二兎追い問題、このコーチ人事にどんな人物が配されるのか注目していたが、発表された新入閣人事で目を引くのが、一、二軍の投手巡回コーチに元巨人・日本ハムなどで実績も十分の浅野啓司氏。日本記録のシーズン68暴投を記録し、「三本の矢でも折れるモノは折れる」を実証してしまったバッテリーに光山英和氏。打撃には小川博文氏と他球団でコーチをしていた森政権時代のOBが並び、投手には現投手陣もよく知り、信頼も厚い木塚敦志が復帰と、ある程度経験値を汲んだ組閣という印象がある。
「DeNAベイスターズは指導者の人材育成においてはまだまだ黎明期です。自前でコーチを育てることも大事ですが、一方で最大の目的は勝つこと。『まだ人材育成中だから』といった言い訳もできないので両立、並走させていかなくてはなりません。来年、しっかりと勝負するためにも、監督一人で勝負するのではなく、高田GMの組閣プランによって、経験のあるコーチをそろえました。組織全体で監督をサポートしながら優勝を目指して勝負していきます」
今季の敗因は「単純なミスが多すぎた」。
しかし、返す返すも残念でならないのは今季。前半戦、5割ながら首位で折り返すという千載一遇のチャンスも、終わってみれば最下位。DeNAになって1年目の2012年はどん底の6位、2年目最下位争いを制し5位に浮上。3年目4位を争うも競り負けてまた5位と段階的に成長が目に見えていながらも、今年またふりだしに戻ってしまったかのような徒労感。
一体何が原因で、チームに足りなかったものは何なのか。池田社長は「とにかく、単純なミスが多すぎた」と分析する。
「秋季キャンプのスローガンにもなっていますが、今のDeNAベイスターズに足りないものは“凡事徹底”です。プレイ、指導、コミュニケーション、すべてにおける基本の徹底。さまざまなところで、チームにおいて凡事が徹底されていなかった。それが勝てなかった、最下位に転落した一番の原因だと思います。
選手たちとも相談して、“自分たちのチームに何が足りないのか”ということを再認識して共通の意識を持ち、それをファンの皆様に表明するために、あえて最終戦のセレモニーでファンと共有するVTRを流しました。正直、プロ野球なのにあらためて『凡事徹底』……という複雑な思いもありましたが、ファンのみなさん含めてみんなの正直な気持ちと悔しさはその言葉に集約されますからね。
過去の内実を聞いても、ベイスターズは昔から良くも悪くも自由奔放で、細かいことは言わず、大らかな空気があるチームだったようです。それは選手個人個人が成熟していれば優勝した'98年のように選手同士でゲームを作れて、チームとしての強さを生み出すこともあるのかもしれませんが、そこまでにはまだまだ至っていない。勝つための凡事を徹底できないレベルで、チーム全体が自由奔放では、成熟したチームとシーズンを通して戦う長丁場の結果は自明になってしまう。
監督・コーチ陣をはじめ、全員の意識が基本の細かいことからすべてを徹底することに向いて、選手同士でもミスが発生したら、慰め合うよりも冷たい視線が飛ぶくらいの空気が生まれたチームにならなければ、いつまでも“ベイスボール”と揶揄される世界から抜け出せない。これまでは、そういう文化がこの球団にもチームにも育ってこなかった。心地よくないことを言うのは人間誰しも難しい。そこを直視してこなかった。これはプロの世界では、『勝てない』ということになるだろうと思います」