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これぞプロ、館山昌平の「動じなさ」。
自分の仕事を淡々と続ける男の凄み。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2015/10/02 10:50

これぞプロ、館山昌平の「動じなさ」。自分の仕事を淡々と続ける男の凄み。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

二桁勝利が2人いるものの、ヤクルトの先発陣は苦しい台所事情。館山の復帰、そして6勝はチームを救ったといえるだろう。

120%よりも、常に出せる100%こそが大事。

 優勝がかかっていようと、ペナントレースの中の1つの試合のごとく、自分の仕事を全うすることだけに集中する。若い選手の多いヤクルトの中で、館山のような冷めた頭を持った選手というのは、これからの戦いでも大きな力となるわけである。

 そうして理詰めて一つ一つの仕事を組み立てていく。それがプロの仕事である。

「自分にコントロールできないことに感情を左右されるのはプレーにとって決してプラスにはならない。自分でコントロールできることだけに集中して、そのことをやりきる。それがどんな場面でも力を発揮できることにつながると思う」

 これは元ヤンキースの松井秀喜さんの言葉だ。気持ちの高揚度が120%もなければ60%もない。常に100%。同じテンションでグラウンドに立てることこそ、大試合で力を発揮する一番の武器になる。

 リハビリはその日、体調がいいからといって無理してやれば必ず反動がくる。その代わり体調がすぐれず、同じ運動をするのも辛い日でも、必ずこなさなくてはならない。もしそこでテンションが下がってメニューをやり切らなければ、それまで積み上げてきたものがすべて崩れて、再び1からのスタートになることもある。だから日々、淡々と自分でできることをやらなければならない。そういう戦いを嫌というほど経験してきた強さが館山にはあるのだ。

数字以上に影響力のあった6つの勝ち星。

 6月28日の復帰から、この右腕があげた勝ち星は6つある。ただ、この6つには数字以上にチームに与えた影響は大きかったはずだ。

 勝負どころでそういう強さを持ったプロが帰ってきた。それが今年のヤクルトの最後の勝負強さの秘密だったし、ポストシーズンに向けての武器となるはずである。

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館山昌平
東京ヤクルトスワローズ
松井秀喜

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