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これぞプロ、館山昌平の「動じなさ」。
自分の仕事を淡々と続ける男の凄み。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2015/10/02 10:50

これぞプロ、館山昌平の「動じなさ」。自分の仕事を淡々と続ける男の凄み。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

二桁勝利が2人いるものの、ヤクルトの先発陣は苦しい台所事情。館山の復帰、そして6勝はチームを救ったといえるだろう。

優勝がかかっていても、ピッチングは変わらない。

 シャワーを浴びる時に右手にシャンプーを取ってみて、頭まで持って行こうと試みる。しかし最初は肘が曲がらず頭まで届かないが、その距離が徐々に近づき、最後には右手でシャンプーを頭にかけられるまでになった。そういう日常的な動きを繰り返して肘の回復状態を確認していたと本人も語っている。

 冷静に現状を見つめて、自分が何をして、どう動くべきなのかを判断できる。それが151針を乗り越えてマウンドに立ち続ける館山の強さなのかもしれない。

 その強さが優勝争いからクライマックスシリーズというこれからの勝負ではヤクルトの最大の武器になるのではないかと思う。

 胴上げを託されたマウンド。結果的には5回で5四球を与える内容で3失点して負け投手となってしまったが、試合後の館山のコメントにはむしろ冷静に状況を受け止めて、そこに頼もしさを感じるものだった。

「特に優勝がかかっているから、自分のピッチングが変わるわけではないですね」

 館山は言う。

「優勝がかかっていようと、いまいと自分に与えられた役割は先発投手として先に点をやらないこと。そのことだけを考えて投げました。だから立ち上がりはフォアボールを出しても、一発に気をつけて甘く行かないように。ただ、(4回に)先に点をもらって今度逆に、走者をためて一発を打たれるのが嫌だったから、フォアボールを出さないように(前後に揺さぶって)奥行きを使いながら大胆に行こうと思ったんですけど……」

コントロールできることと、できないこと。

 5回に広島の丸佳浩外野手のソロとブラッド・エルドレッド内野手の2ランを浴びて3点を失った。両方とも甘く入った失投だった。そのことを館山は分かっていた。

 勝敗をコントロールするために躍起になるのではなく、あくまで自分のできることに専念する。それが先発投手の役割だということを館山は言いたかったのだ。

 かつてロッテで指揮をとったボビー・バレンタイン監督は、勝ち負けにこだわって投げたがる日本の先発投手にそのこを口を酸っぱくして説いた。

「君たちが集中しなければならないのは、マウンドでいかに6回までを3点に抑えるかということだ。その6回の中で結果として勝つこともあるし、負けることもある。ただ勝敗をコントロールして責任を持つのは監督の仕事だから、そこまでコントロールしようとする必要はない」

【次ページ】 120%よりも、常に出せる100%こそが大事。

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