プロ野球亭日乗BACK NUMBER
これぞプロ、館山昌平の「動じなさ」。
自分の仕事を淡々と続ける男の凄み。
posted2015/10/02 10:50
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
NIKKAN SPORTS
プロとはこういうものだと思う。
ヤクルトが14年ぶりの優勝へのマジックを1とした9月29日の神宮球場。勝てば胴上げという広島戦のマウンドを託されたのは、ベテランの館山昌平投手だった。
多くの野球ファンがご存知のように、館山は3度のトミー・ション手術(右肘靭帯再建手術)に、肩関節、股関節の手術など7度もその身体にメスを入れて全身には151針の傷跡が残っている。手術の度に想像を絶するようなリハビリを乗り越えて復帰を果たしてきた不屈の男である。
2度目のトミージョン手術は、2013年のことだった。
「肘から先が抜けて、皮だけでつながっているような感じでした。そこからはフォークしか投げられなかった。あの試合はあそこしか覚えていない。それ以外の記憶は全くない」
4月5日のDeNA戦に先発した際に、右肘に違和感を感じて降板。すでにトミー・ジョン手術は1度受けていたが、翌日の精密検査で肘の腱の再断裂がわかり12日に手術を受けた。
翌'14年にはキャンプで1軍復帰を果たしたものの、4月5日のイースタン巨人戦で1球投げたところで緊急降板。検査の結果、10日後の4月15日に右肘外側滑膜ひだの切除手術を受け、その際に3度目の肘の内側側副靭帯の再建と右前腕屈曲腱の縫合手術も受けた。そこから再び1年のリハビリを強いられたわけである。
理詰めで物事を考えるタイプの館山。
そうして今年の6月28日の巨人戦で814日ぶりの1軍復帰を果たし、7月11日のDeNA戦では1019日ぶりの白星を飾って、完全復活を果たした。
「もともとウェートトレーニングとかを熱心にやって身体を作ってきた選手。トレーニングでも筋肉のつき方や体の構造から研究して、1つ1つのパーツを構築していく。理詰めで物事を考えるタイプです。トミー・ジョンのリハビリは、並大抵のことではない過酷さと聞きますが、そういうタイプの選手だから3度の手術でも、一段一段と階段を登っていくようなリハビリに耐えられたんだと思います」
ベテランのヤクルト担当記者の説明だ。